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CTBTに反せず 米臨界前核実験 林氏、歴代見解踏襲

 米国が今月実施した臨界前核実験を巡り、林芳正官房長官は20日の記者会見で包括的核実験禁止条約(CTBT)に違反しないとの見解を示した。先週の上川陽子外相に続き問題視しない考えを示し、歴代政府の見解を踏襲する岸田政権の姿勢が浮き彫りになった。抗議するか否かの問いには言及せず、被爆者は「核兵器のない世界を掲げながら言行不一致だ」と憤りの声を上げた。

 林氏は計画段階の実験に触れた14日の上川氏と同様に、「CTBTで禁止される核爆発を伴うものではない」と述べた。CTBTに反しない核実験は容認するのか問われると「核軍縮に取り組む中で今後検討すべき課題だ」と論評を避けた。これも2019年の菅義偉官房長官(当時)と一言一句同じ答弁だった。

 米国の臨界前核実験は21年9月以来でバイデン政権で3回目。被爆者団体や広島県の湯崎英彦知事、広島市の松井一実市長らが米国への抗議を表明する一方、日本政府はいずれも静観している。

 日本被団協の田中熙巳代表委員(91)は取材に「岸田政権が核軍縮を掲げるのなら核開発の一環である臨界前核実験には明確に抗議するべきだ。核の傘からどう抜け出すかを米国に提言するのが被爆国の役割だ」と話した。(樋口浩二)

(2024年5月21日朝刊掲載)

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