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後藤新平の功績 より間近で 住民ら、銅像を海岸沿いに移設 似島に帰還兵の検疫所設置

 日清戦争の帰還兵の伝染病対策として、広島湾に浮かぶ似島(広島市南区)への検疫所の設置を陸軍の文官として実現させた後藤新平。地元住民たちが、島内にある銅像を間近で見られるよう海岸沿いへ移し、新たに説明板を設けた。「功績をより多くの人に知ってほしい」と願う。

 高さ約3メートルの立像は、これまで児童養護施設「似島学園」の敷地内にあった。「立ち寄った人が気づきにくい」との声を受け、似島歴史ボランティアガイドの会や同学園関係者でつくる保存会が主体になり今年3月、市の許可を得て学園東側の道路脇へ移した。傍らに新設した説明板では、船舶や衣服を消毒した検疫所の概要や、のちに政治家としても活躍した後藤の足跡を伝える。

 銅像は似島出身の実業家が1938年に造り、島内の所有地に立てた。戦時中は金属供出を免れるため3分割し近くの防空壕(ごう)に隠して守り通した。92年に検疫所跡地の似島学園へ移したという。

 今回の移設により、以前はフェンス越しで分かりにくかった3分割の跡もよく見えるようになった。保存会の宮崎佳都夫(かずお)会長(76)は「後藤新平や検疫所をきっかけに、似島の歴史をもっと知ってもらえれば」と期待する。(頼金育美)

(2024年5月24日朝刊掲載)

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