×

ニュース

急性障害のデータ検証 援護事業団 鎌田氏ら

■記者 吉原圭介

 広島原爆被爆者援護事業団の鎌田七男理事長らの研究グループが、日米に保管されていた被爆者のカルテや解剖データを分析し、放射線被曝(ひばく)による急性骨髄障害の発症経過を検証した。外傷はなくても白血球が減少して死亡するケースが目立つ。

 鎌田氏らは東広島市西条町にあった傷痍(しょうい)軍人広島療養所で1945年9月15日までに被爆死した27人分のカルテのコピーを入手。うち19人については、米陸軍病理学研究所(AFIP)から返還された同一人物の記録や解剖データとも照合した。

   このうち外傷ややけどがなかった9人に着目。爆心地から530~1100メートルで被爆し、5~8グレイと中程度の放射線を浴びたと推定され、被爆5~24日後に入院。カルテによると、うち5人が2週間前後で脱毛症状に見舞われ、通常は4000~8000ある白血球数が数百まで激減した人もいた。

 一方、9人のほかに45年9月に死亡した人のなかで白血球数が5900まで回復し、解剖データによると骨髄の一部が再生していたケースもあった。

 これらを基に鎌田氏らは、(1)脱毛や吐き気(2)入院(3)白血球の急減が判明(4)死亡―との経過を指摘。被曝により骨髄の造血機能が破壊され白血球が急減するものの、1カ月ほどで造血機能は再生傾向を見せたと分析する。

 鎌田氏は「現代であれば抗生物質で助かる人もずいぶんいたはず。データは放射線事故などでの救急医療に役立つ」と話している。

(2009年7月24日朝刊掲載)

年別アーカイブ