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社説・コラム

朝凪(あさなぎ) 率直な「怒り」が出発点

 寝ぼけまなこで弁当を作り、声を張り上げ子を順に起こして学校に送り出す。毎朝のルーティンは短距離走のよう。最近は夜も声を張る。小6の次男がなかなか就寝しないからだ。漫画「はだしのゲン」の再読を始めたら止まらなくなったという。

 小3で1度読んだが、成長して読むと感じ方も違うらしい。今回彼を捉えたのは、人間の醜悪な部分だそうだ。朝鮮人や被爆者への差別、長いものに巻かれ、手のひら返しする大人…。いわく「今の世の中も同じ」。

 子どもながら過去と現在を重ね、不条理に怒っている。思えば、彼は初めて「ゲン」に触れた時にも、人間の頭上に原爆を落とす行為への怒りを真っすぐ口にしていた。人として、理不尽に対する率直な怒りは大切にしたい。それが過ちを繰り返さぬ出発点だと思うから。(平和メディアセンター・森田裕美)

(2024年6月1日朝刊掲載)

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