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連載・特集

緑地帯 アシュリ・サウザー ガザに思いを寄せて①

 本当に良い先生とは、物事を違った視点から見られるように指導できる先生だと思う。多様な視点を持つことはとても大切だ。

 私にとって、20代半ばでパレスチナに行き、銃のある監視塔や検問所に囲まれたガザで暮らしたことは、その意味で転換点だった。欧州系米国人として当たり前に思っていた人間の権利を、すべての人が享受できているわけではないことを目の当たりにした。頭で理解するだけでなく、心で感じた。

 今、東広島市で高校生に平和学を教えている。ある被爆者の方に助言を求めたところ、「戦争という過ちを二度と繰り返さないためには、平和だけではなく正義も教えなければなりません」と言われた。

 しかし、正義は、ある意味で幾度も人々を戦争へ向かわせてきた。パレスチナの「正義」がイスラエルの「正義」を暴走させ、今、ガザにおびただしい血が流れている。

 私は、多様な視点を持つための前提として、異なる背景を持つ私たちが本当はどれほど共通点を持っているのか、実際に出会い、交流を通じて気付くことが大事と思う。

 昨年10月、ガザから3人の中学生が国連機関の研修で私たちの学校を訪れた。一緒に漫画のキャラクターのバッグを作り、柔道を体験し、お弁当を食べながら、同じKポップアイドルの話で盛り上がった。その翌日、今回の戦争が始まった。 (武田中・高教諭=東広島市)

(2024年6月4日朝刊掲載)

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