緑地帯 アシュリ・サウザー ガザに思いを寄せて④
24年6月7日
毎週金曜の夜、ユダヤ教徒の家族は安息日「シャバット」を祝う。新鮮な花、特別なパン、ろうそくをそろえ、ヘブライ語でお祈りをする。
ガザの戦火を受け、広島市の原爆ドーム前では「広島パレスチナともしび連帯共同体」による反戦集会が毎晩続けられ、私も可能な日に参加している。ある金曜の晩、そこでシャバットの儀式があり、私も参加した。
「え? イスラエルが続ける戦争に反対するのに、なんでユダヤ教の儀式をするの」と知り合いが言う。私は「国と文化は別物だから」と答える。
文化は私たちを過去や他者と結びつけ、生活やアイデンティティーを豊かにする。大切なもの、後世に伝えたいものを守る。文化とは、人間であることの経験を祝うものである。
これに対し国とは、端的には私たちを制限し管理するルールであり、私たちを他者から引き離す。放っておけば、組織化、分離、管理の度合いをますます強めていく。
米国は、ガザの停戦を求める国連安全保障理事会の決議案に対し、何度も拒否権を行使した。これは、自由と人権を重んじる米国の文化の長所とは相反するものだ。
「一人の命を救う者は全世界を救う」は、ユダヤ教の聖典にある言葉だ。原爆ドーム前の空間で、私たちは文化と人類愛によって結ばれている。私たちは、安全保障を口実に経済的利益を得ようとする国家主義者にだまされてはいけない。 (武田中・高教諭=東広島市)
(2024年6月7日朝刊掲載)
ガザの戦火を受け、広島市の原爆ドーム前では「広島パレスチナともしび連帯共同体」による反戦集会が毎晩続けられ、私も可能な日に参加している。ある金曜の晩、そこでシャバットの儀式があり、私も参加した。
「え? イスラエルが続ける戦争に反対するのに、なんでユダヤ教の儀式をするの」と知り合いが言う。私は「国と文化は別物だから」と答える。
文化は私たちを過去や他者と結びつけ、生活やアイデンティティーを豊かにする。大切なもの、後世に伝えたいものを守る。文化とは、人間であることの経験を祝うものである。
これに対し国とは、端的には私たちを制限し管理するルールであり、私たちを他者から引き離す。放っておけば、組織化、分離、管理の度合いをますます強めていく。
米国は、ガザの停戦を求める国連安全保障理事会の決議案に対し、何度も拒否権を行使した。これは、自由と人権を重んじる米国の文化の長所とは相反するものだ。
「一人の命を救う者は全世界を救う」は、ユダヤ教の聖典にある言葉だ。原爆ドーム前の空間で、私たちは文化と人類愛によって結ばれている。私たちは、安全保障を口実に経済的利益を得ようとする国家主義者にだまされてはいけない。 (武田中・高教諭=東広島市)
(2024年6月7日朝刊掲載)