『潮流』 曇りなき目
24年6月8日
■特別論説委員 宮崎智三
みずみずしい感性に触れ、気付かされることが多くある。4月から広島市内の大学でジャーナリズム関連の授業を受け持ち、改めて感じている。
例えば先月。ニュースに絡み、パレスチナ自治区ガザを攻撃しているイスラエルを取り上げた。8月6日の平和記念式典に呼ぶかどうか、意見をつづってもらった。
最も多かったのは、ウクライナに侵攻したロシアと、同調するベラルーシを含む3カ国とも呼ぶべきだとの意見。80人近い学生の6割を超えた。
その理由は―。被爆地の役割や、式典の重みを踏まえたものが目立った。「戦争したり関わったりしている国こそ、核兵器や戦争の悲惨さを知る必要がある」「平和への願いは全ての人類にとって開かれたものでなければならない」
来るかどうか分からないし、問題解決につながるとは言い切れない。それでも「呼ぶことに意味がある」という。被爆地のあるべき姿を示したような意見に感服した。
とはいえ、ロシアとベラルーシは2年前から呼んでいない。「そもそも両国を呼ばなかったことが良くなかった」。うなずける意見も出たが、方針を百八十度転換して招くことは今やできまい。
現実的な対応は、2番目に多い意見の方かもしれない。「3カ国とも呼ぶべきではない」で、全体の3割近かった。
なぜなら「イスラエルだけ呼ぶとガザ侵攻容認と捉えられかねない」。被爆地のイメージ低下が不安なのだろう。
曇りなき目で導き出した学生たちの意見は、市民の思いとも重なるのではないか。ちなみに、広島市と同じ「ロシアとベラルーシは呼ばず、イスラエルだけ呼ぶ」と答えたのは1人だった。
(2024年6月8日朝刊掲載)
みずみずしい感性に触れ、気付かされることが多くある。4月から広島市内の大学でジャーナリズム関連の授業を受け持ち、改めて感じている。
例えば先月。ニュースに絡み、パレスチナ自治区ガザを攻撃しているイスラエルを取り上げた。8月6日の平和記念式典に呼ぶかどうか、意見をつづってもらった。
最も多かったのは、ウクライナに侵攻したロシアと、同調するベラルーシを含む3カ国とも呼ぶべきだとの意見。80人近い学生の6割を超えた。
その理由は―。被爆地の役割や、式典の重みを踏まえたものが目立った。「戦争したり関わったりしている国こそ、核兵器や戦争の悲惨さを知る必要がある」「平和への願いは全ての人類にとって開かれたものでなければならない」
来るかどうか分からないし、問題解決につながるとは言い切れない。それでも「呼ぶことに意味がある」という。被爆地のあるべき姿を示したような意見に感服した。
とはいえ、ロシアとベラルーシは2年前から呼んでいない。「そもそも両国を呼ばなかったことが良くなかった」。うなずける意見も出たが、方針を百八十度転換して招くことは今やできまい。
現実的な対応は、2番目に多い意見の方かもしれない。「3カ国とも呼ぶべきではない」で、全体の3割近かった。
なぜなら「イスラエルだけ呼ぶとガザ侵攻容認と捉えられかねない」。被爆地のイメージ低下が不安なのだろう。
曇りなき目で導き出した学生たちの意見は、市民の思いとも重なるのではないか。ちなみに、広島市と同じ「ロシアとベラルーシは呼ばず、イスラエルだけ呼ぶ」と答えたのは1人だった。
(2024年6月8日朝刊掲載)