緑地帯 アシュリ・サウザー ガザに思いを寄せて⑥
24年6月12日
「戦闘機かっこいい!」。私は米国で、当たり前のようにそう思いながら育った。かっこいいだけでなく、われわれの国や世界の自由を守っていると。
先日、私と同じように長い間日本に住むイスラエル人で元空軍兵士のダニー・ネフセタイさんと会った。彼も同じだった。「戦闘機のパイロットになりたかった。イスラエルの社会でそれは最も光栄な、かっこいい仕事だから」と。
米国でもイスラエルでも、国が道徳の基準であり、国のために自己を犠牲にするのがいい人、という考えは強い。
私は1997年、米国のど真ん中カンザスから広島の山間部、世羅西町(現世羅町)に英語指導助手として来日した。沖縄への修学旅行や、広島の平和記念公園への平和学習の引率でショックを受けた。
核大国でもある米国が日本を守っていると思っていた私は、沖縄戦や原爆の犠牲者を知り、原爆投下機エノラ・ゲイをかっこいいとは思えなくなった。
ダニーさんも2008年、自国の軍がガザで多くの罪のない人々を殺すのを見て、自分の受けた教育が「国に従う」ためのものだと痛感したという。
広島市の新規採用職員向けの研修資料に、戦前の「教育勅語」が引用されているというニュースに触れた。天皇が国の主権者だった時代の、縦社会構造の上にある道徳であることは否定できない。その方向に行けば行くほど、私が広島で出合った平和教育はできにくくなる。 (武田中・高教諭=東広島市)
(2024年6月12日朝刊掲載)
先日、私と同じように長い間日本に住むイスラエル人で元空軍兵士のダニー・ネフセタイさんと会った。彼も同じだった。「戦闘機のパイロットになりたかった。イスラエルの社会でそれは最も光栄な、かっこいい仕事だから」と。
米国でもイスラエルでも、国が道徳の基準であり、国のために自己を犠牲にするのがいい人、という考えは強い。
私は1997年、米国のど真ん中カンザスから広島の山間部、世羅西町(現世羅町)に英語指導助手として来日した。沖縄への修学旅行や、広島の平和記念公園への平和学習の引率でショックを受けた。
核大国でもある米国が日本を守っていると思っていた私は、沖縄戦や原爆の犠牲者を知り、原爆投下機エノラ・ゲイをかっこいいとは思えなくなった。
ダニーさんも2008年、自国の軍がガザで多くの罪のない人々を殺すのを見て、自分の受けた教育が「国に従う」ためのものだと痛感したという。
広島市の新規採用職員向けの研修資料に、戦前の「教育勅語」が引用されているというニュースに触れた。天皇が国の主権者だった時代の、縦社会構造の上にある道徳であることは否定できない。その方向に行けば行くほど、私が広島で出合った平和教育はできにくくなる。 (武田中・高教諭=東広島市)
(2024年6月12日朝刊掲載)