青い熱気 広島染めた 20年ぶり代表戦 新サカスタで サポーター 観光に平和に
24年6月12日
サッカー日本代表の2026年ワールドカップ(W杯)アジア2次予選のシリア戦があった11日、広島市内は全国からサポーターが詰めかけ、熱気に包まれた。20年ぶりの代表戦に市内各所が青く染まった。(神田真臣、頼金育美)
試合は日本が5―0で大勝。終了の笛が鳴ると、大きな拍手が広島の空に響いた。尾道市の会社員砂取伸(のぼる)さん(37)は「大量ゴールで盛り上がった。トップ選手が見られる代表戦は最高」と興奮していた。チケットが手に入らなかった市民も周辺に集まり、スタジアムのモニター越しに見守った。
キックオフ前は市内を観光する人が目立った。お好み焼き店が集まる「お好み村」(中区)にいた鹿児島県・奄美大島の民宿経営籾(もみ)昭海さん(58)は「初めて食べたがおいしかった。ユニホームを着ているとフレンドリーに話しかけられ、野球やバスケの話題でも盛り上がった」と喜んだ。
平和記念公園(同)では、北九州市の主婦上田美樹さん(46)が娘たちと原爆慰霊碑を訪れた。「勉強になればと思い、連れて来た。スタジアムから近いと平和も学べていい」と話した。
両親、弟と観戦した三重県桑名市の中学1年アミーラ・アルシェイクさん(12)は2歳のとき、内戦が続くシリアから日本へ逃れた。「両チームを応援している。母国のことも試合をきっかけにもっと知ってほしい」と願った。
広島のサッカー関係者らは、新スタジアム初の代表戦にサッカー人気の高まりを期待し、ヒロシマから平和が広がるよう願いも込めた。
J1サンフレッチェ広島監督時代から、専用スタジアム誕生を願い続けた森保一監督にとって待望の瞬間が訪れた。試合前の国歌斉唱時、目を潤ませた指揮官は「ピッチとスタンドが一体になれる素晴らしいスタジアムだという喜びで感極まった」と振り返った。
スタジアムの指定管理者であるJ1広島の仙田信吾社長は、代表戦を通した平和の国際的な発信に期待。「キャプテン翼の壁画に込められた『武器ではなくサッカーで戦おう』というメッセージを、紛争当事国のシリアの人々にも感じてほしい」と求めた。
4万人が代表戦開催の目安の中、約2万8500人収容のスタジアムでW杯予選を行うのは異例だった。広島県サッカー協会の古田篤良会長は「広島でのW杯予選は最初で最後かもしれない。多くの人の目がサッカーに向くきっかけになれば」とかみしめた。
この日、スタジアムを訪れた日本サッカー協会の宮本恒靖会長は「代表戦を地方の方々に見てもらうこと、新スタジアムでやることで、地域のサッカー熱の高まりにつなげたかった」と狙いを説明。今後の代表戦開催に関しても「地域にどういう効果があったかを追いかけたい」と検証する考えを示した。(山本堅太郎、高橋良輔)
(2024年6月12日朝刊掲載)
試合は日本が5―0で大勝。終了の笛が鳴ると、大きな拍手が広島の空に響いた。尾道市の会社員砂取伸(のぼる)さん(37)は「大量ゴールで盛り上がった。トップ選手が見られる代表戦は最高」と興奮していた。チケットが手に入らなかった市民も周辺に集まり、スタジアムのモニター越しに見守った。
キックオフ前は市内を観光する人が目立った。お好み焼き店が集まる「お好み村」(中区)にいた鹿児島県・奄美大島の民宿経営籾(もみ)昭海さん(58)は「初めて食べたがおいしかった。ユニホームを着ているとフレンドリーに話しかけられ、野球やバスケの話題でも盛り上がった」と喜んだ。
平和記念公園(同)では、北九州市の主婦上田美樹さん(46)が娘たちと原爆慰霊碑を訪れた。「勉強になればと思い、連れて来た。スタジアムから近いと平和も学べていい」と話した。
両親、弟と観戦した三重県桑名市の中学1年アミーラ・アルシェイクさん(12)は2歳のとき、内戦が続くシリアから日本へ逃れた。「両チームを応援している。母国のことも試合をきっかけにもっと知ってほしい」と願った。
待望の瞬間に感涙 森保監督
広島のサッカー関係者らは、新スタジアム初の代表戦にサッカー人気の高まりを期待し、ヒロシマから平和が広がるよう願いも込めた。
J1サンフレッチェ広島監督時代から、専用スタジアム誕生を願い続けた森保一監督にとって待望の瞬間が訪れた。試合前の国歌斉唱時、目を潤ませた指揮官は「ピッチとスタンドが一体になれる素晴らしいスタジアムだという喜びで感極まった」と振り返った。
スタジアムの指定管理者であるJ1広島の仙田信吾社長は、代表戦を通した平和の国際的な発信に期待。「キャプテン翼の壁画に込められた『武器ではなくサッカーで戦おう』というメッセージを、紛争当事国のシリアの人々にも感じてほしい」と求めた。
4万人が代表戦開催の目安の中、約2万8500人収容のスタジアムでW杯予選を行うのは異例だった。広島県サッカー協会の古田篤良会長は「広島でのW杯予選は最初で最後かもしれない。多くの人の目がサッカーに向くきっかけになれば」とかみしめた。
この日、スタジアムを訪れた日本サッカー協会の宮本恒靖会長は「代表戦を地方の方々に見てもらうこと、新スタジアムでやることで、地域のサッカー熱の高まりにつなげたかった」と狙いを説明。今後の代表戦開催に関しても「地域にどういう効果があったかを追いかけたい」と検証する考えを示した。(山本堅太郎、高橋良輔)
(2024年6月12日朝刊掲載)