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社説・コラム

『想』 上口雅彦(じょうぐちまさひこ) 英語文献で学ぶ日本史

 日本史や宗教・文化についての外国人同士のディスカッションに、いつも日本人はたじたじ。ましてや英語でとなるとお手上げ。しかし、英語で読む日本史は別の次元の感覚で、少しずつ分かるようになってきた。

 Hiroshima’s Historiographersは2018年秋、頼山陽史跡資料館(広島市中区)の英語担当職員が日本史に詳しい米国人、ロシア人たちを集め、江戸後期の儒学者、頼山陽や日本史に関する英文学術論文を読む勉強会を立ち上げたことに始まる。外国人観光客の増加に伴い、レベルの高い説明が求められると考えたからだ。

 20年9月、同館のシンポジウム「頼山陽の国際的評価―日本外史がつなぐ世界と日本―」の運営を支援した。ロバート・タック氏(アリゾナ州立大助教授)がオンラインで講演。武家の興亡を論じた「日本外史」が世界で広く読まれたことを指摘し、再評価の必要性を説いた。会場では日本近世史を専門とするベティーナ・グラムリヒ=オカ氏(上智大教授)のほか、当会からも代表のジョン・メンシング氏(編集者)、セルゲイ・トルストグゾフ氏(広島大客員教授)が登壇した。海外の研究者が、頼山陽の価値を見いだし発信していることを再認識した。

 昨年5月に広島市であった先進7カ国首脳会議(G7サミット)を機に開かれたみんなの市民サミットでは、「見過ごされた歴史」セミナーを開き、日本外史を取り上げた。

 定例会は広島国際会議場(中区)で毎週水曜日午後6時から開く。メンシング代表が選ぶ英文学術論文のテーマは多岐にわたる。頼家の宗教儀式、平家納経と厳島神社、村上海賊、毛利元就、戦後広島の歴史…。視察ツアーとして郡山城(安芸高田市)、江田島市や似島(広島市南区)の戦争遺跡なども訪れた。

 神道や仏教、海賊など、日本人が深く考えてこなかったことに、英語文献は新しい発見を与えてくれる。私もツアーガイドを務めているが、学びの成果が生き、手応えを得ている。 (Hiroshima’s Historiographers事務局長)

(2024年6月13日朝刊セレクト掲載)

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