緑地帯 アシュリ・サウザー ガザに思いを寄せて⑧
24年6月14日
ガザへの攻撃継続についてあまりにかたくななイスラエルの態度の背景に、ホロコーストのトラウマ(心的外傷)が指摘される。中国が、アヘン戦争期から1世紀に及ぶ「百年の恥辱」の記憶から、強くなることを誓うのとも重なる。
トラウマを抱えた人々の考えを理解するには、その立場になることが重要だ。祖父母が人種差別的な虐殺で亡くなり、父母が逃れようとした先の国々で拒絶されたとなれば、自らの安全を自らの力で確保しようとするのは人間として自然なことに違いない。
そうした重い歴史に向き合うとき、国際的な規範、人道法に対する懐疑的な反応が出るのも理解できる。しかし、かつて「金床」であった側が「ハンマー」になるだけでは、たたく・たたかれる関係は変わらない。ハンマーと金床のサイクルから抜け出すためには、新しい関係を創造する必要がある。
現在ハンマーで打たれている人々にそれをつくり出す余裕はない。ハンマーを振るっている側は、自分たちが過去に打たれたことを理由に、自らの行動を正当化する。したがって第三者、私たち「世界の共同体」が傍観せず、諦めず、何を実行していくか。当たり前だがそれが重要だ。昨年10月に始まったガザでの戦争で、犠牲者は4万人に迫ろうとしている。
国際人道法を実現するか、それとも静かにハンマーまたは金床になる順番を待つかは、私たち次第だ。(武田中・高教諭=東広島市)=おわり
(2024年6月14日朝刊掲載)
トラウマを抱えた人々の考えを理解するには、その立場になることが重要だ。祖父母が人種差別的な虐殺で亡くなり、父母が逃れようとした先の国々で拒絶されたとなれば、自らの安全を自らの力で確保しようとするのは人間として自然なことに違いない。
そうした重い歴史に向き合うとき、国際的な規範、人道法に対する懐疑的な反応が出るのも理解できる。しかし、かつて「金床」であった側が「ハンマー」になるだけでは、たたく・たたかれる関係は変わらない。ハンマーと金床のサイクルから抜け出すためには、新しい関係を創造する必要がある。
現在ハンマーで打たれている人々にそれをつくり出す余裕はない。ハンマーを振るっている側は、自分たちが過去に打たれたことを理由に、自らの行動を正当化する。したがって第三者、私たち「世界の共同体」が傍観せず、諦めず、何を実行していくか。当たり前だがそれが重要だ。昨年10月に始まったガザでの戦争で、犠牲者は4万人に迫ろうとしている。
国際人道法を実現するか、それとも静かにハンマーまたは金床になる順番を待つかは、私たち次第だ。(武田中・高教諭=東広島市)=おわり
(2024年6月14日朝刊掲載)