『潮流』 「空襲」救済法案の行方
24年6月15日
■特別論説委員 岩崎誠
国会会期末が迫る中で気になるのが空襲被害者の救済法案の行方だ。過去の通常国会でも超党派の「空襲議連」で議員立法を繰り返し模索するも提出に至らないまま。ことしも最後までチャンスを探っているという。
先週、上京の折に黒岩哲彦弁護士に現状を聞いた。全国空襲被害者連絡協議会の運営委員長。旧軍人・軍属や被爆者と違い、何の救済もされない被害者と与野党議員をつなぐ役回りだ。「諦めません。今からでも成立は可能と思っています」
戦時下で空襲や船舶からの砲撃などに遭った生存者で身体の障害があるか、心理的外傷を受けるなどした人に50万円の特別給付金を支払う―。いつでも提出できる法案は国家賠償を願う被害者から見れば限定的だ。自民党を巻き込める現実的な内容には違いない。
現に安倍政権下で国会提出の動きが本格化。歴代議連会長の自民議員の引退や死去、さらには公選法違反の立件もあって停滞した経緯がある。4月に平沢勝栄氏が会長、松島みどり氏が会長代行に就いて仕切り直したが戦後補償には後ろ向きな自民の「厚労族」が壁になっているという。
朝ドラ「虎に翼」主人公のモデル、三淵嘉子さんが裁判官の一人だった東京の原爆訴訟に黒岩さんは注目する。戦争被害への国の結果責任に言及し、「政治の貧困」を嘆いた1963年の名判決の趣旨は空襲被害者にも当てはまる、と。
年老いた生存者を思うと時間はない。同じく戦後補償のシベリア特措法が2010年に衆参3日で成立したこともある。議連には岸田文雄首相の側近、木原誠二氏も名を連ねる。苦境に立つ首相に政治決断を期待するのは無理なのだろうか。
(2024年6月15日朝刊掲載)
国会会期末が迫る中で気になるのが空襲被害者の救済法案の行方だ。過去の通常国会でも超党派の「空襲議連」で議員立法を繰り返し模索するも提出に至らないまま。ことしも最後までチャンスを探っているという。
先週、上京の折に黒岩哲彦弁護士に現状を聞いた。全国空襲被害者連絡協議会の運営委員長。旧軍人・軍属や被爆者と違い、何の救済もされない被害者と与野党議員をつなぐ役回りだ。「諦めません。今からでも成立は可能と思っています」
戦時下で空襲や船舶からの砲撃などに遭った生存者で身体の障害があるか、心理的外傷を受けるなどした人に50万円の特別給付金を支払う―。いつでも提出できる法案は国家賠償を願う被害者から見れば限定的だ。自民党を巻き込める現実的な内容には違いない。
現に安倍政権下で国会提出の動きが本格化。歴代議連会長の自民議員の引退や死去、さらには公選法違反の立件もあって停滞した経緯がある。4月に平沢勝栄氏が会長、松島みどり氏が会長代行に就いて仕切り直したが戦後補償には後ろ向きな自民の「厚労族」が壁になっているという。
朝ドラ「虎に翼」主人公のモデル、三淵嘉子さんが裁判官の一人だった東京の原爆訴訟に黒岩さんは注目する。戦争被害への国の結果責任に言及し、「政治の貧困」を嘆いた1963年の名判決の趣旨は空襲被害者にも当てはまる、と。
年老いた生存者を思うと時間はない。同じく戦後補償のシベリア特措法が2010年に衆参3日で成立したこともある。議連には岸田文雄首相の側近、木原誠二氏も名を連ねる。苦境に立つ首相に政治決断を期待するのは無理なのだろうか。
(2024年6月15日朝刊掲載)