サミット 核軍縮議題なし 抑止力再び肯定 市民落胆
24年6月18日
イタリアで15日に閉幕した先進7カ国首脳会議(G7サミット)で、核軍縮は議題にならなかった。昨年の広島サミットを主導した岸田文雄首相が、ライフワークとする「核兵器のない世界」を各国首脳に呼びかける場面はなかったとみられる。市民からは落胆の声が上がっている。
13日から3日間あった今回のサミットの議題は中東、ウクライナ情勢や移住、気候変動対策など11項目あった。人工知能(AI)や経済安全保障が広島サミットから引き継がれた一方、核軍縮は広島サミットのように特定の議題として討議する場はなかった。
外務省幹部は、日本の一存で議題の設定を左右できないと説く。世界共通の課題を踏まえ「議長国のイタリアが味付けした」と説明し、日本が「核軍縮を軽視しているわけではない」と理解を求める。
では、首相は核軍縮のメッセージをどう発したのか―。林芳正官房長官は17日の記者会見で問われると、「ロシアによる核の威嚇、使用はあってはならないと強調した」と述べるにとどめた。ロシアのウクライナ侵攻開始以来、2年余り繰り返されている文言だ。
首脳声明では核軍縮に関して「全てのものにとっての安全が損なわれない形での核兵器のない世界」と言及した。被爆者が批判した広島サミットの核軍縮文書「広島ビジョン」と同様、核抑止を肯定する考えに基づく表現といえる。
G7に核廃絶の政策提言をした部会メンバーで、一般社団法人かたわら(横浜市)の高橋悠太代表理事(23)=福山市出身=は「首脳が対面で本音の議論をする場だからこそ、岸田首相は核兵器の非人道性と廃絶を訴えてほしかった」と話している。(宮野史康)
(2024年6月18日朝刊掲載)
13日から3日間あった今回のサミットの議題は中東、ウクライナ情勢や移住、気候変動対策など11項目あった。人工知能(AI)や経済安全保障が広島サミットから引き継がれた一方、核軍縮は広島サミットのように特定の議題として討議する場はなかった。
外務省幹部は、日本の一存で議題の設定を左右できないと説く。世界共通の課題を踏まえ「議長国のイタリアが味付けした」と説明し、日本が「核軍縮を軽視しているわけではない」と理解を求める。
では、首相は核軍縮のメッセージをどう発したのか―。林芳正官房長官は17日の記者会見で問われると、「ロシアによる核の威嚇、使用はあってはならないと強調した」と述べるにとどめた。ロシアのウクライナ侵攻開始以来、2年余り繰り返されている文言だ。
首脳声明では核軍縮に関して「全てのものにとっての安全が損なわれない形での核兵器のない世界」と言及した。被爆者が批判した広島サミットの核軍縮文書「広島ビジョン」と同様、核抑止を肯定する考えに基づく表現といえる。
G7に核廃絶の政策提言をした部会メンバーで、一般社団法人かたわら(横浜市)の高橋悠太代表理事(23)=福山市出身=は「首脳が対面で本音の議論をする場だからこそ、岸田首相は核兵器の非人道性と廃絶を訴えてほしかった」と話している。(宮野史康)
(2024年6月18日朝刊掲載)