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連載・特集

『生きて』 カメラマン 三浦憲治さん(1949年~) <9> YMO

常に何かやらかす3人

≪海外ツアーをきっかけに打ち解けたのはイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)の細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏の3人だ≫

 最初の出会いは1979年、米ロサンゼルスであったライブ。その後、小学館がワールドツアー(80年)を追った写真集を雑誌「GORO」の別冊で出すことになり、その写真を担当することに。それまで大御所の鋤田(すきた)正義さんがYMOを撮っていたんだけど、なぜか俺に話が来たんだよね。

 ツアーはイギリス・オックスフォードから始まり、ドイツ、スウェーデン、イタリアと毎日のように国が変わり、最後は米ニューヨークで終了する47日間。俺は一度、日本に戻ってフィルムを現像し、ロサンゼルスへ飛んでツアーに合流した。

 ライブだけでなく、ホテルでくつろいだり、街を楽しんだりする3人の姿も撮った。坂本さんとはよくばかばかしい話をしたね。ツアー終了後、編集者と「もっとプライベートなシーンを撮れないか」と話していたら、3人からOKが出て、それぞれの自宅にお邪魔することになったんだ。

 ≪YMOのワールドツアーに加え、プライベートも盛り込んだ写真集「Omiyage」を81年に発表した≫

 写真集にはいろんな顔を盛り込んだ。坂本さんは正月に明治神宮で撮った。その場が大騒ぎになるかと思ったが、ならなかった。細野さんは赤坂の歯医者で、歯科医と歯科衛生士に囲まれて口を開けている。高橋さんは趣味の釣り。6時間粘って結局一匹も釣れなかった。

 3人には鍛えられたよ。カメラを向けると何かをやらかす。俺もみんなと年が近く、いつも写真で会話できる感じがしていた。だからね、昨年、高橋さんと坂本さんが相次いで亡くなったのは残念のひと言。言葉にならない寂しさがある。もっと俺のカメラの前に立ってほしかった。

(2024年6月19日朝刊掲載)

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