全国市長会会長に就任 松井一実・広島市長に聞く
24年6月20日
人口減 国は俯瞰的対策を
平和文化 振興の意義を共有
国内815市・特別区でつくる全国市長会の会長に12日付で就任した広島市の松井一実市長(71)が中国新聞のインタビューに応じた。人口減少問題に関し「場当たり的でなく、国として全体像を俯瞰(ふかん)した対策を出すべきだ」と主張。被爆地選出のトップとして市長会を通じた平和文化の振興に意欲も示した。(渡辺裕明)
―就任会見で強調した「真の地方分権」をどう実現しますか。
国との役割分担を再定義し、地方自治体が直面する課題を主体的に解決できる仕組みの構築を目指したい。権限移譲に見合った財源の手当てがなされていない。まず現行制度下で実現可能な取り組みを積極的に行い、住民の目に見える形で成果を出し、国より地方に任せた方がより良いサービスになると実感してもらう必要もある。
広島市では「200万人広島広域都市圏構想」を掲げ、国の制度を活用しながら広島、山口、島根3県の30市町が協調して地方創生に取り組んでいる。会長としてこの取り組みも紹介しながら、さらなる地方分権の推進に力を尽くしたい。
―地方自治法の改正で、国の「指示権」が拡大します。
今回の改正は、全国市長会の意見などを踏まえた内容になっていると受け止めている。ただ、地方分権の観点などから各自治体の自主性・自立性が損なわれる恐れを心配する声も聞く。国の補充的な指示は目的達成のための最小限の範囲とし、現場の実情を踏まえた措置となるべきだ。今後の運用の在り方をしっかり注視したい。
―人口減少問題が喫緊の課題ですね。
全国市長会は2015年に特別委員会を設け、議論の成果をその都度、国に要請や提言として届けてきた。それでも、人口減に歯止めがかかっていない。国には改めて国全体の問題として考えてもらいたい。東京一極集中の是正と分散型の国土開発を図る大胆な政策が重要だ。場当たり的や事後的な対策だけではだめで、全体像を俯瞰した対策を国として出すべきではないか。
―被爆地の市長として平和文化の振興を全国市長会長の立場でどう展開していきますか。
当然、全国市長会の目的に沿った活動が本務になるが、平和文化を振興する意義を皆さんと共有し、一緒に取り組めるような環境づくりもしていきたい。
まつい・かずみ
京都大法学部卒。厚生労働省大臣官房総括審議官(国際担当)などを経て2011年に広島市長に初当選した。現在4期目。核兵器廃絶や恒久平和を目指す世界約8400都市でつくる平和首長会議会長も務めている。広島市東区出身。
(2024年6月20日朝刊掲載)