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社説・コラム

『この人』 広島県被団協の事務局長に就任した 熊田哲治(くまだてつじ)さん

 結成70年を再来年に控える広島県被団協(箕牧(みまき)智之理事長)の事務局長に3日付で就いた。被爆2世として、被爆者や支援者と出会い、交流を深めてきた経験が、今につながっている。「内向的で人と話すのが苦手な自分を育ててもらった。その恩を返す時期かな」

 被爆者が負った心身の傷を間近で見てきた。父親が被爆者。親族が集まると必ず原爆に話が及んだ。大やけどを負った叔母は笑いながら当時を振り返っていた。「今思うと本当につらい事は言えなかったのだろう」

 県職員となり、20代後半で労働組合の役員に。自治労県本部の青年部で被爆2世の健康に関するアンケートを実施した際は、2世であることを隠している県内の組合員から反発を受けた。同じ2世でも差別に苦しんでいる人がいると初めて知った。

 一方で組合活動を通じて、反核平和運動を支えた故宮崎安男さんに影響を受けた。携わった平和集会で話を聞き、被爆者でなくても体験を受け継ぎ、被爆者援護に奔走する姿に心を打たれた。40代後半に広島市原爆被害者の会へ入会。被爆者と接する中で、子への影響を心配し、被爆したことを罪に感じている様子に「こんな思いを誰にもさせてはならない」との意を強くした。

 昨年、県被団協から請われて事務局次長になった。「県被団協は地域の会があってこそ。手を取り合い、被爆者や2世への援護を充実させたい」と冷静に基本理念を貫く。西区で妻と2人暮らし。 (山下美波)

(2024年6月27日朝刊掲載)

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