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連載・特集

緑地帯 東繁春 ロサンゼルスの日本文化⑧

 ロサンゼルスから約200キロ、メキシコとの国境近くの都市サンディエゴにあるジャパニーズ・フレンドシップ・ガーデン(日本友好庭園)には、広島で被爆した樹木の実や苗木から育ったイチョウ、アオギリ、フジの木が植えられている。

 広島市の市民団体「グリーン・レガシー・ヒロシマ・イニシアティブ(GLH)」が寄贈したもので、2015年3月に植えられた。日本友好庭園の筆頭副会長を務める河村幾之助さんは被爆者。2歳3カ月の時、現広島市南区で原爆に遭い、戦後は尾道で育った。「原爆の子の像」のモデル・佐々木禎子さんと同い年だ。幼少期から体が弱く、その理由が原爆にあるかもしれないと思ったが、周囲に相談する人がいなかったという。

 同志社大大学院で圧電磁器を研究し、1969年京セラに入社。新製品の開発チームに入り、その実績から71年にサンディエゴ工場に派遣され、北米、欧州、ブラジルでの海外生活が始まった。京セラ欧州統括会社社長などを歴任後、2000年から京セラ・インターナショナル社の北米の教育責任者として、創業者・稲盛和夫氏の経営理念を伝えた。

 12年に引退後は、サンディエゴで平和活動に情熱を注がれている。日本友好庭園で毎年行われる小学生を対象にした1週間のサマースクールでは、米国の小学生に自らの被爆体験と、幼少期の葛藤を語っている。(カルチュラル・ニュース編集長=ロサンゼルス、呉市出身) =おわり

(2024年6月28日朝刊掲載)

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