×

社説・コラム

朝凪(あさなぎ) 進化続ける先輩に学ぶ

 不妊治療を経て、36歳で授かった長女が今春、中学生になった。周囲のお母さんは大抵、年下。参観日も保護者会も、年齢がばれないよう、細心の注意を払う。ところが最近、立て続けに人生の大先輩を取材し、「ただの数字」を気にするわが身の未熟さを思い知らされた。

 広島交響楽団と圧巻の演奏を繰り広げたピアニストのマルタ・アルゲリッチさんは83歳。すてきなスーツを着こなす78歳の小説家高樹のぶ子さんは、新作を執筆中だ。そして、中国短編文学賞の優秀賞に輝いた武谷田鶴子さんは今年、96歳になる。

 16歳で被爆し、心身に深い傷を負った武谷さんは、怒りを沈殿させ、小説に昇華してきた。受賞作は被爆少女の叫びであり、後世に残すべき作品だ。「書き続けるわ!」という武谷さんの言葉を胸に刻み、反すうしている。(文化担当・桑島美帆)

(2024年7月4日朝刊掲載)

年別アーカイブ