被服支廠 活用策の提案続々 全4棟保存決定で関心高まる 広島県の本格検討は3年後
24年7月9日
広島市南区にある最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」を巡り、市民団体などから広島県へ利活用策の提案が相次いでいる。全4棟の保存が決まり、関心が高まっているためだ。ただ県は当面は耐震工事に注力する考えで、利活用の本格検討は3年後になる見通しだ。市民からは放置された状態が続くことへの懸念の声もある。(河野揚)
市民団体「『自然の博物館』をつくる会」は6月中旬、1棟を自然史博物館として活用するよう求める要望書を県へ提出した。平山琢朗会長(67)は「地球生態系を守るには平和が不可欠。自然史博物館は平和の象徴になる」と意義を訴えた。
この1週間前には、県の国際交流事業に参加した高校生たち3人が平和学習施設として活用するよう県へ提案。広島に投下された原爆リトルボーイの実寸大の模型を置く展示などを求めた。
昨年12月には市民団体「平和美術館設立準備委員会」が画家丸木位里、俊夫妻の絵などを展示する平和美術館にするよう要請している。
提案が相次ぐ背景には今年1月、被服支廠が国重要文化財(重文)に指定された影響がある。県と国が全4棟の保存を決めたため、焦点が存廃から利活用へ移っている。広島の被爆者7団体も近く被爆者運動の活動記録の収集や保存などの拠点として活用するよう要望する。
ただ、県都市圏魅力づくり推進課の吉田竜也担当課長は「一定の時間をかけて丁寧に検討したい」と、拙速な利活用の議論に慎重な姿勢を見せる。まずは2024~26年度に予定する耐震工事に重点を置く方針だ。
耐震工事は最低限の安全対策のため、工事後は内部の見学などしかできない。新たな利活用には追加の改修工事が必要になるが、予算確保のめどは立っていない。複数の県幹部は「利活用策の本格検討は工事後の27年度以降」と想定する。
被服支廠は約30年間、使われないままになっている。市民団体「旧被服支廠の保全を願う懇談会」の多賀俊介副代表(74)は「ずっと使われないままになるのを危惧している。早く利活用の方針を示してほしい」と願う。
旧陸軍被服支廠
旧陸軍の軍服や軍靴を作っていた施設。1914年の完成で爆心地の南東2.7キロにあり、被爆後は臨時救護所となった。広島県が1~3号棟、国が4号棟を所有する。県は国、市とつくる研究会で利活用を検討する方針。県は1号棟を平和学習、2~4号棟を交流促進や宿泊、観光の拠点とする「将来的な活用イメージ」をまとめている。
(2024年7月9日朝刊掲載)
市民団体「『自然の博物館』をつくる会」は6月中旬、1棟を自然史博物館として活用するよう求める要望書を県へ提出した。平山琢朗会長(67)は「地球生態系を守るには平和が不可欠。自然史博物館は平和の象徴になる」と意義を訴えた。
この1週間前には、県の国際交流事業に参加した高校生たち3人が平和学習施設として活用するよう県へ提案。広島に投下された原爆リトルボーイの実寸大の模型を置く展示などを求めた。
昨年12月には市民団体「平和美術館設立準備委員会」が画家丸木位里、俊夫妻の絵などを展示する平和美術館にするよう要請している。
提案が相次ぐ背景には今年1月、被服支廠が国重要文化財(重文)に指定された影響がある。県と国が全4棟の保存を決めたため、焦点が存廃から利活用へ移っている。広島の被爆者7団体も近く被爆者運動の活動記録の収集や保存などの拠点として活用するよう要望する。
ただ、県都市圏魅力づくり推進課の吉田竜也担当課長は「一定の時間をかけて丁寧に検討したい」と、拙速な利活用の議論に慎重な姿勢を見せる。まずは2024~26年度に予定する耐震工事に重点を置く方針だ。
耐震工事は最低限の安全対策のため、工事後は内部の見学などしかできない。新たな利活用には追加の改修工事が必要になるが、予算確保のめどは立っていない。複数の県幹部は「利活用策の本格検討は工事後の27年度以降」と想定する。
被服支廠は約30年間、使われないままになっている。市民団体「旧被服支廠の保全を願う懇談会」の多賀俊介副代表(74)は「ずっと使われないままになるのを危惧している。早く利活用の方針を示してほしい」と願う。
旧陸軍被服支廠
旧陸軍の軍服や軍靴を作っていた施設。1914年の完成で爆心地の南東2.7キロにあり、被爆後は臨時救護所となった。広島県が1~3号棟、国が4号棟を所有する。県は国、市とつくる研究会で利活用を検討する方針。県は1号棟を平和学習、2~4号棟を交流促進や宿泊、観光の拠点とする「将来的な活用イメージ」をまとめている。
(2024年7月9日朝刊掲載)