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AIの兵器利用防止へ 広島で会合開幕 宗教者 倫理探る

 世界の宗教者たちが、人工知能(AI)を利用する際の倫理について議論する会合が9日、広島市中区の広島国際会議場で始まった。被爆地で核兵器の非人道性を共有した上で、最先端の科学技術であるAIの兵器利用を食い止めるため、宗教を尊ぶ立場から意見を交わした。10日まで。(山田祐)

 カトリックやイスラム教、ユダヤ教のほか、浄土宗などの計約200人が参加した。バチカンの教皇庁立グレゴリアン大のパオロ・ベナンティ教授は原爆が開発された歴史を踏まえ「技術革新は許しがたい過ちにつながるリスクを伴う」と強調。AIの倫理問題を考える大切さを訴えた。

 開発側からIT大手マイクロソフトのブラッド・スミス社長は「原爆が広島と長崎に投下された後、攻撃に使用されたことはない」とし、「人間の幸福のためにAIを活用していくことは可能」と力説した。

 意見交換では「すべての宗教代表者で話し合うべき問題」「拘束力ある規範が必要だ」との声が上がった。

 岸田文雄首相のビデオメッセージもあり、昨年5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)で立ち上げた国際ルールの枠組み「広島AIプロセス」を踏まえ「安全で信頼できるAIに向けて取り組もう」と述べた。

 AIの軍事利用を巡ってはウクライナの戦地などでドローンが利用されているほか、AIによる自律型致死兵器システム(LAWS)開発を各国が競っているとされる。

 会合は世界宗教者平和会議日本委員会などが主催した。10日に採択する宣言文では、核兵器の使用がAIの判断に委ねられる危険を指摘。「AIが生命を破壊し傷つけるために使用されることがないよう世界が誓約することを要請する」などと呼びかける。

(2024年7月10日朝刊掲載)

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