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社説・コラム

天風録 『ざんねんな防衛省』

 貯食というそうだ。動物が食べ物を地中などに蓄えること。よく知られるリスは秋、木の実を頰張ってはせっせと隠す。でも埋めた場所を忘れるらしい。子どもに人気の「ざんねんないきもの事典」シリーズにも描かれる▲取っておいても食べずじまい。そもそも蓄える量が多過ぎなのでは。貯食というリスの習性を連想したのは、防衛費の使い残しが約1300億円と聞いたから。予算を増やしたものの、業務が追い付かなかったようだ▲増額されてきた防衛予算。使い残しても政府は「精査して計上した」と問題視してはいない。それどころか、防衛力強化は待ったなしとして5年間で約43兆円を投じる考えだ。そのために安定した財源が重要だと、防衛増税の必要性を訴える▲使い切れないのに増税までして防衛費をためる―。誰が納得するだろう。しかも今、防衛省は不祥事続き。特定秘密漏えい、潜水手当の不正、パワハラ…。次々掘り出される。川崎重工業から金品を受け取ってもいた▲どれだけ頰張り、ためるつもりか。「事典」によるとリスは頰の袋で食べ物が腐り、病気になることもある。ため込んで組織が腐る―。防衛省がそんな残念なことでは困る。

(2024年7月12日朝刊掲載)

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