『この人』 今年の「ヒロシマ・アピールズ」ポスターを制作したアートディレクター 副田高行(そえだたかゆき)さん
24年7月13日
あの日、広島で被爆した女性が身に着けていた長袖のワンピースの写真を「ヒロシマ・アピールズ」ポスターの全面にあしらった。「デザイナーが頭の中で描くイメージではなく、もっとリアリティーのある表現をしたかった」。作品タイトルは「遺品が訴えるもの」。写真家の石内都さんが撮影した1枚を最大限生かし、訴求力を高めた。
1月に制作を開始。平和への願いを1枚のポスターで表現する難しさを感じていた時、石内さんの写真集を広げた。時計、三輪車、服…。被爆者の遺品の写真が並ぶ中、ライトボックスの上で撮影されたワンピースが目に留まった。「逆光の効果でふわっと浮いているようで、不謹慎かもしれないが、悲惨さと同時に美しい。あの日を象徴的に表現していると思った」
福岡県出身。グラフィックデザインを学んでいた20歳の頃、ビールの新聞広告を見て興味を持った広告制作の道へ進んだ。これまでサントリーのウイスキー「オールド」や全日空の新聞広告を手がけてきた。タカキベーカリー(広島市安芸区)が製造する食パンの包装もデザインし「広島とは縁を感じる」と喜ぶ。
戦後生まれだが、戦争反対や平和への思いは強く、原爆資料館(中区)へはこれまでに数回、足を運んだ。今回の作品にワンピースを使ったのは若者を意識した面もある。「原爆の歴史を伝えていく役割が広島市民にはあると思う。ポスターの前で立ち止まってもらえたら」と願う。東京都世田谷区に暮らす。(山下美波)
(2024年7月13日朝刊掲載)
1月に制作を開始。平和への願いを1枚のポスターで表現する難しさを感じていた時、石内さんの写真集を広げた。時計、三輪車、服…。被爆者の遺品の写真が並ぶ中、ライトボックスの上で撮影されたワンピースが目に留まった。「逆光の効果でふわっと浮いているようで、不謹慎かもしれないが、悲惨さと同時に美しい。あの日を象徴的に表現していると思った」
福岡県出身。グラフィックデザインを学んでいた20歳の頃、ビールの新聞広告を見て興味を持った広告制作の道へ進んだ。これまでサントリーのウイスキー「オールド」や全日空の新聞広告を手がけてきた。タカキベーカリー(広島市安芸区)が製造する食パンの包装もデザインし「広島とは縁を感じる」と喜ぶ。
戦後生まれだが、戦争反対や平和への思いは強く、原爆資料館(中区)へはこれまでに数回、足を運んだ。今回の作品にワンピースを使ったのは若者を意識した面もある。「原爆の歴史を伝えていく役割が広島市民にはあると思う。ポスターの前で立ち止まってもらえたら」と願う。東京都世田谷区に暮らす。(山下美波)
(2024年7月13日朝刊掲載)