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原爆下の友情 「広島の二人」映画化 脚本家菊島隆三の共同執筆作 26年にも公開 錦織監督「世界へ届ける」

 出雲市出身の錦織良成監督(62)が、脚本家菊島隆三(1914~89年)の残した原爆を題材にした脚本を映画化する。広島で被爆した日本兵と米兵捕虜の友情を描く「TWO IN HIROSHIMA 広島の二人」。かつて菊島から脚本を託された保坂延彦監督(79)と共に広島市中区の広島商工会議所で記者会見し、「日本人の監督としてヒロシマ、ナガサキの思いを世界へ届けたい」と決意を語った。(渡辺敬子)

 1945年の広島。捕虜となっても誇りを失わない米兵のアーサーに、軍曹の藤田はひそかに敬意を抱いていた。アーサーが収容所から脱出し、藤田は連れ戻そうと追う。いつしか不思議な友情が芽生えた2人だったが、山腹から原爆の投下を目撃し、黒い雨を浴びる―。敵味方を超えた友情、戦争と原爆の悲劇を描く物語だ。

 黒澤明監督と組んだ「椿三十郎」「天国と地獄」をはじめ、多くの名作を残した菊島。脚本「広島の二人」は66年、安藤日出男(1927~2002年)と共同執筆した。保坂監督は自身の監督デビュー作として未発表の脚本を託されたが、題材の難しさから実現せず、2020年に小説化するにとどめていた。保坂監督は「映画化は諦めていただけに今回の朗報に驚いた。長年の胸のつかえが取れた」と喜ぶ。

 近づく被爆80年を踏まえて「原爆投下を正面から描いてみたい」と錦織監督。CGを用いた映像加工などデジタル技術も活用する考えで「今だからこそ可能な映像表現がある」と語る。独立プロダクションで映画を作り、原爆が落ちた瞬間の残酷さを映画で描く構想を抱き続けた新藤兼人監督の遺志を継ぐ覚悟という。

 出演者はこれから詰めるほか、広島でも撮影を検討する。3月に日本公開された、原爆を開発した科学者の半生を描く「オッペンハイマー」(クリストファー・ノーラン監督)も意識しつつ、錦織監督は「日本の監督として、日本人の視点から原爆を描きたい。世界の人に届ける作品をつくる」と力を込めた。映画は2026年の世界公開を目指す。

(2024年7月13日朝刊掲載)

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