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社説・コラム

社説 [地域の視点から] オスプレイ 岩国初配備 周辺住民の不安 無視するな

 米軍岩国基地(岩国市)に米海軍の輸送機オスプレイが初めて配備される。国がおととい、岩国市や山口県に伝えた。機数は明らかにしていないが、時期は本年中という。

 空母艦載機の機種更新で、老朽化しているC2輸送機をオスプレイに代える。併せてFA18スーパーホーネット戦闘攻撃機の一部も、ステルス戦闘機F35Cに更新する。海軍のオスプレイもF35Cも、国内配備は初めてとなる。

 オスプレイは昨年11月、米軍横田基地(東京都)所属の空軍機が墜落したばかり。本当に安全か、懸念が広がっている。こうした声に、国は耳を傾けなければならない。

 墜落事故は、岩国基地から沖縄・嘉手納基地に向かう途中、鹿児島県屋久島沖で起きた。搭乗員8人全員が死亡した衝撃は大きく、米軍はいったん、世界各地に配備していたオスプレイ全機種の飛行を停止した。

 今年3月、米軍はオスプレイの飛行を再開したものの、墜落事故の根本原因が明らかになったわけではない。しかも、岩国基地に配備される海軍のオスプレイは、事故を起こした空軍機や、海兵隊機と、機体の構造や基本性能は同じだという。これでは、不安の声が膨らむのも無理はあるまい。

 防衛省は「安全性に問題はないと考えている」と岩国市などに説明した。米側に対して、日本国内で飛行する際は引き続き安全面への最大限の配慮を求めていく、という。安全を最優先しているか、住民目線で厳しくチェックすることが必要だ。

 オスプレイは今、岩国基地には一時的に飛来してくる程度。普天間飛行場(沖縄県)所属の海兵隊のオスプレイなどが、他基地と行き来する際の中継地の扱いだった。

 配備されれば、岩国基地の重みが増すのではないか。実際、離島防衛などを想定した日米共同訓練の一環で、海兵隊と空軍のオスプレイ8機程度が今月下旬から10日間余り、岩国基地を拠点に訓練するという。このまま拠点機能が常態化されないか、そんな懸念が生じかねない。

 騒音も、地元は心配している。防衛省は「岩国基地の飛行機は若干減り、騒音は現状より広がらないと見込んでいる」と説明している。

 ただ、騒音訴訟が起こされている横田基地の周辺では、オスプレイ特有の重低音による影響を不安視する声がある。科学的な検証が岩国でも必要となる。

 「大きな不安が地元に追加される形で、同意なく進められることは、あってはならない」。山口県の村岡嗣政知事は政府説明を聞いた後の会見で、そうくぎを刺した。

 防衛政策は政府の管轄である。とはいえ、安全性や騒音に対する不安は、周辺自治体も含めた多くの住民に広がっている。無視は許されない。政府には、徹底した情報公開と、米国に物申す際の毅然(きぜん)とした姿勢が求められる。

(2024年7月17日朝刊掲載)

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