天風録 『未来予想の答え合わせ』
24年7月17日
50年後の広島はどうなっているか。1963年元日の本紙に、そんな予想特集が掲載された。大学教授らが知恵を絞ったそうで、現代と答え合わせをすると面白い。夢物語だったはずのスマホやオンライン授業の普及を的中させている▲残念ながら外れもある。未来は世界各国と携帯テレビでつながるため、議員の海外視察は不要になると見立てた。大勢でぜいたくを尽くす「大名旅行」などは過去の遺物になったのだと▲先人も驚くだろう。広島県議会の議員22人が今月下旬に欧州を視察する。核拡散防止条約の関連委員会に合わせ、スイスなどを訪れるとの触れ込みだ。歴史的な円安の折、県費はしめて3500万円を超える。庶民には高根の花となった地に、ぞろぞろと赴く必要性はあるのやら▲行く以上は成果が求められる。核兵器廃絶の訴えに加え、ネットで得られない知見や人脈を県政にどう生かすか。帰国後の報告や言動に、厳しい視線を向けられる覚悟は皆お持ちだろう▲未来予想はこう続く。〈全議員は真剣にその職責に励み、住民の深い尊敬の的になっている〉。痛烈な皮肉とも切実な願いとも取れる。先人の思いに応えるなら、大名旅行では終わるまい。
(2024年7月17日朝刊掲載)
(2024年7月17日朝刊掲載)