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両親の思い継ぎ初証言 1歳9ヵ月で被爆 木村さん 東京「語れる者」として活動

 1歳9カ月の時に広島市で被爆した東京都青梅市の木村一茂さん(80)が21日、都主催の「原爆犠牲者追悼のつどい」で家族の体験を初めて証言した。原爆の悲惨さを自身に伝えた両親の思いを背負い、20分近く話した。被爆79年を迎えて語り手が減る中、「語れる者」の役割を果たそうと決意した。

 葛飾区のホールに集まった120人を前に「記憶はほとんどないが、父や母、姉から聞いていた」と切り出した。地図や家族の写真を示し、ゆっくりと丁寧に語った。

 爆心地から2・5キロ。現在の西区己斐中にあった自宅で被爆した。生まれたばかりの弟は母に守られたが、翌年5月に下痢を繰り返し、生後10カ月で息を引き取った。「弟とどんな話をしたかと今も思わずにはいられない。原爆は一瞬で平和な家族の営みを奪ってしまった」と訴えた。

 木村さんは1998年、母に付き添って東京都の被爆者団体「東友会」に入会。証言の注意点を伝える冊子の作成に携わるなど証言活動を支えてきた。自らが語ることはなかったが、今回は東友会の依頼を快諾。体験を語る被爆者が亡くなっていく現状を踏まえ、証言を始めると決めた。

 実は被爆後の10月、木村さんは父と車に乗り、市内を回っていた。父は「『この光景をよく見ておきなさい』と言ったんだ」と何度も話したという。その父は82年に、母も2005年に死去。「私には体験を聞く機会が身近にあった。語れる者としてできる限り証言していきたい」と誓う。(宮野史康)

(2024年7月22日朝刊掲載)

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