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「ヒロシマ 心に残ったか」 「核廃絶 目立つ功績なし」 バイデン氏撤退 被爆地の声

 バイデン米大統領の大統領選からの撤退表明を受け、広島の被爆者や市民には22日、複雑な思いが広がった。核超大国を率いるリーダーは、昨年5月に広島市であった先進7カ国首脳会議(G7サミット)で「核なき世界の実現」を誓った一方、政権下で臨界前核実験を繰り返してきた。

 バイデン氏は2016年のオバマ氏に続き被爆地広島を訪れた2人目の現職の米大統領。昨年の広島サミットでは、岸田文雄首相たち首脳と原爆資料館(中区)を見学後、芳名録に「世界から核兵器を最終的に、そして、永久になくせる日に向けて、共に進んでいきましょう」とつづった。

 見学時にバイデン氏と対話した被爆者の小倉桂子さん(86)は「熱心に見ていた。彼の心にヒロシマがどう残ったのか気になる」と話す。サミット後に大統領から贈られた手帳には自身の被爆体験を聞いた約300人の感想が記されている。異例の展開が続く米大統領選に「どうすれば世界が平和になるか、身近な問題として日本人も考えてほしい」と呼びかける。

 一方、バイデン政権下では今年5月を含め3度の臨界前核実験を実施。パレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスと戦闘を続けるイスラエルも支援している。

 広島県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(82)は「核兵器廃絶に目立った功績はなかった。悪いものは悪いと言ってくれる大統領じゃないと」。もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(79)は「就任時は核軍縮へ進むと期待したが、広島サミットで核抑止論を肯定した」と非難した。

 次の大統領が誰になるのか。市民団体「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)」共同代表の森滝春子さん(85)は「自国第一主義で何をするか分からないトランプ氏になればさらに悪い方向に向かうのでは」と危機感を募らせる。

 市民グループ「核政策を知りたい広島若者有権者の会」(カクワカ広島)共同代表の田中美穂さん(29)は、バイデン氏から後継指名を受けた黒人女性のハリス副大統領に注目する。「これまでも核兵器の政策決定に女性がいない問題を指摘してきた。違いを打ち出してほしい」と願う。(川上裕、野平慧一、山下美波)

(2024年7月23日朝刊掲載)

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