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大和ミュージアムで特別展 山崎貴監督に聞く 戦争の悲惨 映画でリアルに

視覚効果を駆使 人の愚かさ伝えたい

 今年の米アカデミー賞で視覚効果賞に輝いた映画「ゴジラ―1・0(マイナスワン)」や「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005年)などで知られる山崎貴監督(60)の映像世界を紹介する特別展が、呉市の大和ミュージアムで開かれている。戦争を描く意味やVFX(視覚効果)を駆使して伝えたいメッセージとは―。山崎監督に聞いた。(栾暁雨)

  ―「永遠の0」(13年)や「アルキメデスの大戦」(19年)など、戦争を描いた作品が多いですね。
 自分の中で非常に大きなテーマとして浮かび上がっている。小さい頃は「はだしのゲン」など戦争を題材にした漫画が周りにたくさんあって、読むと恐ろしかった。怖さを克服するために戦争の正体を探ろうとしたのが出発点だ。

  ―正体は分かりましたか。
 考えれば考えるほど、分からなくなっている。歴史をたどると、覇権を握ろうとする国家間の戦争や紛争で埋め尽くされていて、戦争をするのは「人類の業」のようなものではないかと思い至った。人間の愚かしさをVFXで表現した映像で「戦争にかじを切ったらこんな悲惨なことになる」とリアルに感じてほしい。特に為政者に見てもらいたい。

  ―「アルキメデスの大戦」では呉で造られた戦艦大和が登場します。大和に引きつけられる理由は。
 大和の沈没が、太平洋戦争の終わる一つのきっかけになったと思っていて。当時の最先端技術の集大成で世界最大の戦艦だったのに、航空機時代の到来で「時代遅れ」になった。悲しい運命の象徴のような船。「無駄」とも思えるこの存在に何らかの意味を持たせたい、とずっと思っていた。

  ―今後の作品で挑戦したいことは。
 いつかは原爆をテーマにした作品に取り組んでみたい。今回の特別展の開幕前日に、平和記念公園(広島市中区)で原爆ドームや原爆資料館を見学して、惨状に衝撃を受けた。作り手の僕の精神状態が持つかどうか自信はないが、目を背けちゃいけないテーマだと思う。

    ◇

 「映画監督 山崎貴の世界―映画で描かれた戦争とVFX」展は11月24日まで。火曜休館(祝日の場合は翌日休館)。7月23日~8月31日は無休。

やまざき・たかし
 長野県出身。VFXの技術者を経て、2000年に監督デビュー。主な監督作に「STAND BY ME ドラえもん」(14年)など。

(2024年7月24日朝刊掲載)

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