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連載・特集

緑地帯 西谷真理子 私と中国地方出身のデザイナー①

 東京の出版社で40年近くファッション雑誌の編集に携わり、定年退職後、縁あって京都精華大の新設のファッションコースの特任教授に就任した。住んだ年数は圧倒的に東京が長いのに、郷愁を感じるのは、子ども時代に通算8年を過ごした京都だ。とはいえ、両親の出身地は京都ではなく兵庫県淡路島で、その昔は水軍だったという親戚の証言もあり、関西から瀬戸内海と続く土地には親しみがある。

 そんな私が2020年、益田市にある島根県芸術文化センター「グラントワ」(石見美術館・いわみ芸術劇場)の協議会委員という役目を頂戴した。

 05年10月に開館した石見美術館は、20世紀初頭のフランスの衣装やテキスタイルの貴重なコレクションを持ち、かつ、年に1度はファッション展を開催。展覧会は、懐古的な内容にとどまらず、日本の若いデザイナーの活動を積極的に紹介する果敢さもある。私の任務は年に1度の協議会に出席して、ファッションの専門家としての意見を述べることで、これがきっかけとなり、山陰の小さな街に足を踏み入れ、行くたびに中国地方を訪ね歩いている。広島市出身のデザイナー三宅一生さん(1938~2022年)は、私の編集者人生に大きな印象を残した人だが、この機会に、三宅さんに始まる中国地方出身のファッションデザイナーの知られざる横顔を紹介してみたいと思う。(にしたに・まりこ 編集者=東京都)

(2024年7月24日朝刊掲載)

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