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連載・特集

『生きて』 脚本家 池端俊策さん(1946年~) <1> ドラマ黄金期 偉大な先輩追いかける

 NHK大河ドラマ「太平記」「麒麟(きりん)がくる」をはじめ、数々のテレビドラマをお茶の間に届けてきた呉市出身の脚本家、池端俊策さん(78)。名優緒形拳さん最期の主演作となった「帽子」など、故郷を舞台にした作品も多い。半世紀近く第一線で活躍してきた文化功労者は、筋書きのない人生を送ってきた。

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 テレビドラマの黄金期は1970年代、80年代、90年代といわれている。向田邦子さん、山田太一さん、倉本聰さんといった大先輩を追いかけて、言葉を紡いできた。放送文化発展の一端を担うことができたとしたら大変喜ばしい。

 自分の書いたドラマが、世の中に意味を持つのか。視聴者に感情移入してもらえるのか。常に不安との闘い。もちろん失敗もした。視聴率が振るわず、主演の有名俳優のマンションに呼び出されたこともあった。その人はゴルフクラブを磨きながら「もうちょっと何とかしてよ」って、嫌な感じで言うんだ。

 完成品の小説と違って、脚本は映像作品の原点。俳優、演出家、カメラマン…たくさんの人の手を通って完成する。出来上がりが自分のイメージと一致していることもあれば、ずれていることもある。新しい視点や解釈に気付かされる。それは脚本家独特の面白さだと思う。

  ≪緒形さんとの名コンビで知られる≫

 泥くさい武骨な職人が似合う役者だった。「帽子」もだが、いろんな職人をやってもらったなあ。「緒形さんでドラマにしてみたい」と思わせる強烈な個性があった。引き付けられる。テレビを見ていた人も同じ感覚だったのではないでしょうか。

 ≪今も原稿用紙に向かう日々を送る≫

 若い頃に勉強した歴史や文学の魅力的な人物たちは、今になってもドラマ作りの糧になっている。(この連載は東京支社・山本庸平が担当します)

(2024年7月30日朝刊掲載)

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