天風録 『広島の変貌』
24年8月2日
先人たちの営みの上に新たな魅力を重ねる。それが、街を変貌させるダイナミズムだろう。そんなホットな動きのある場所の一つが、広島市なら今年お目見えしたサッカースタジアムである▲周辺で整備が進んでいた商業・レジャー施設ヒロパがきのう開業した。併せてスタジアムを含む一帯が「ひろしまスタジアムパーク」としてオープン。平和記念公園を訪れる国内外の観光客も引き寄せる新たなスポットにどう育てるのか期待される▲真夏の厳しい日差しに芝生が輝く。空の青さとの対比で緑が一層引き立つ。平和記念公園で心に刻んだ平和への思いを反すうするのに、そんな空間がふさわしいのかもしれない▲何せパークは原爆資料館や原爆慰霊碑、原爆ドームを結ぶ「平和の軸線」の延長線上にある。旧市民球場の跡地にできた公園の遊歩道を経て、ここまで延びた。回遊すれば、街の発する平和への熱気を感じられそうだ▲パークは、戦前の広島に思いもはせられる。地下には旧日本軍の遺構が眠っている。初の広島県出身の宰相で、軍縮を先導した加藤友三郎の銅像もある。平和への熱い思いが広島を変貌させた。訪れた人に気付いてもらえるのではないか。
(2024年8月2日朝刊掲載)
(2024年8月2日朝刊掲載)