朝凪(あさなぎ) 坪井さん 背中のくぼみ
24年8月6日
仕事で壁にぶち当たった時、自分のかばんに手を伸ばす。ファイルの中に、取材先から頂いた手紙や写真、そして坪井直さんからのはがきを入れている。
ロングインタビューをしたのは被爆70年の夏だった。病を押してなお核兵器廃絶運動の先頭に立つ思いを約2時間聞いた。
「遺言を残す気持ちで話したんよ」。取材の最終盤、当時90歳の坪井さんは不意にワイシャツをはぐり、私の手を取った。背中の下部を触ってみろと。
驚いた。肉がそがれ、握り拳ほどのくぼみがあった。「原爆でえぐられた。造血機能が破壊された跡よ」。言葉を失った。
坪井さんが亡くなり3年。きょうは原爆の日。「ネバーギブアップ」。はがきを見ると坪井さんの熱いまなざしを思い出す。廃絶を諦めない。思いを胸にきょうもペンを握る。(編集委員室・東海右佐衛門直柄)
(2024年8月6日朝刊掲載)
ロングインタビューをしたのは被爆70年の夏だった。病を押してなお核兵器廃絶運動の先頭に立つ思いを約2時間聞いた。
「遺言を残す気持ちで話したんよ」。取材の最終盤、当時90歳の坪井さんは不意にワイシャツをはぐり、私の手を取った。背中の下部を触ってみろと。
驚いた。肉がそがれ、握り拳ほどのくぼみがあった。「原爆でえぐられた。造血機能が破壊された跡よ」。言葉を失った。
坪井さんが亡くなり3年。きょうは原爆の日。「ネバーギブアップ」。はがきを見ると坪井さんの熱いまなざしを思い出す。廃絶を諦めない。思いを胸にきょうもペンを握る。(編集委員室・東海右佐衛門直柄)
(2024年8月6日朝刊掲載)