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核禁条約 埋まらない溝 被爆者 会議参加や批准促す 首相 否定的姿勢崩さず

 岸田文雄首相が出席する「被爆者代表から要望を聞く会」が6日、広島市中区であった。二つの広島県被団協など7団体は被爆80年の2025年にある核兵器禁止条約の締約国会議へのオブザーバー参加を政府に求めたが、岸田首相は「核兵器国を動かさないと現実は動かない」と否定的な考えを示した。(和多正憲、河野揚、樋口浩二)

 「(禁止条約に)署名・批准していなくても、法の支配と人道主義の立場から関与できるはず」。7団体が提出した要望書は条約に後ろ向きな政府に姿勢の転換を促した。9月に自民党総裁の任期満了を迎える岸田首相には「必ず在任中に『核兵器なき世界』への具体的な道筋を」と迫った。

 団体別の要望でも、政府に積極的な関与を求める声が相次いだ。県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(82)は「原爆を投下した米国、投下された日本が一緒に署名・批准を」、もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(79)も、唯一の戦争被爆国の参加こそが「他の未批准国へも大きく影響を与える」と訴えた。

 これに対し、岸田首相は「禁止条約に努力されている方々も、日本政府も同じ目標を共有する」と強調。その上で「条約の目指す『核兵器のない世界』に核兵器国をどれだけ近づけることができるかが、日本の具体的な取り組みだ」と述べた。

 終了後、箕牧理事長は「なぜ被爆国の日本が積極的に前へ出ないのか。残念だ」と憤った。

 岸田首相はその後の記者会見で、広島、長崎両市が被爆80年に向けて進める被爆体験の継承事業について「デジタル技術を活用した啓発活動の推進などを国としてしっかり後押ししたい」と強調した。

(2024年8月7日朝刊掲載)

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