核廃絶 考えに隔たり 各国代表 式典に思い ヒロシマ8・6
24年8月7日
6日の平和記念式典には、109カ国と欧州連合(EU)の代表が参列した。ロシアやイスラエルによる核兵器使用が危ぶまれる中、原爆の惨禍を知る地に立ち、被爆地の核廃絶への訴えを思い思いに受け止めた。
「家族への思慕は絶えず、79年前の苦しみに終止符はないのだろう」。被爆者や遺族に思いを重ねたのは、1990年にイラクによる侵攻を受けたクウェートのサーミ・アルザマーナーン大使。「戦争はやはり非情だ」とつぶやいた。
核廃絶に向けた姿勢ははっきり分かれた。チリのルイス・アルベルト・パルマ次席参事官は「被爆者の苦難と回復力に触れ、心揺さぶられた」とし、中南米の非核兵器地帯条約に加わり、核兵器禁止条約も推進する自国の立場に言及。「人道的観点から廃絶を進めようと、法的手段を追求してきた。核保有国も腰を据えて交渉を」と訴えた。
一方、核保有国の英国。ジュリア・ロングボトム大使は「英政府は核軍縮に積極的な役割を果たす」と述べつつ、「単独で核軍縮を進めても世界平和に貢献できない」と強調。他国が核を持つ以上、抑止力を手放さない考えを示した。
米国の「核の傘」の下にいながら、核兵器禁止条約の締約国会議にオブザーバー参加しているノルウェーからはクリスティン・イグルム大使が参列。「国家間の衝突が増え、軍縮から防衛強化へ潮流が変わってしまった」とし、「ヒロシマの記憶を世界に伝えることが、今まで以上に大切になっている」と被爆地の発信に期待した。(田中美千子、小林可奈)
(2024年8月7日朝刊掲載)
「家族への思慕は絶えず、79年前の苦しみに終止符はないのだろう」。被爆者や遺族に思いを重ねたのは、1990年にイラクによる侵攻を受けたクウェートのサーミ・アルザマーナーン大使。「戦争はやはり非情だ」とつぶやいた。
核廃絶に向けた姿勢ははっきり分かれた。チリのルイス・アルベルト・パルマ次席参事官は「被爆者の苦難と回復力に触れ、心揺さぶられた」とし、中南米の非核兵器地帯条約に加わり、核兵器禁止条約も推進する自国の立場に言及。「人道的観点から廃絶を進めようと、法的手段を追求してきた。核保有国も腰を据えて交渉を」と訴えた。
一方、核保有国の英国。ジュリア・ロングボトム大使は「英政府は核軍縮に積極的な役割を果たす」と述べつつ、「単独で核軍縮を進めても世界平和に貢献できない」と強調。他国が核を持つ以上、抑止力を手放さない考えを示した。
米国の「核の傘」の下にいながら、核兵器禁止条約の締約国会議にオブザーバー参加しているノルウェーからはクリスティン・イグルム大使が参列。「国家間の衝突が増え、軍縮から防衛強化へ潮流が変わってしまった」とし、「ヒロシマの記憶を世界に伝えることが、今まで以上に大切になっている」と被爆地の発信に期待した。(田中美千子、小林可奈)
(2024年8月7日朝刊掲載)