規制拡大 会場に物々しさ 平和式典の入場 公園全体が対象 一部団体 退去応じ
24年8月7日
祈りの朝は、例年以上に物々しさが漂った。6日に平和記念式典が営まれた平和記念公園(広島市中区)は園全体が入場規制の対象となったが、一部の団体が市などの退去の求めに応じず、規制後もとどまる事態が発生。米国でトランプ前大統領が演説中に銃撃された事件を受け、式典は厳重警備が敷かれた。
「慰霊の日です。配慮をお願いします」。午前5時の入場規制の開始前。前日夜から原爆ドーム前で座り込み、市の規制に抗議していた市民団体「8・6ヒロシマ大行動実行委員会」に対し、市が県警と連携して園外への移動を促した。
100人以上の団体側は市などの再三の求めにも「法的根拠はあるのか」などと声を上げて拒否。市が条例に基づいて退去命令を出し、幹部に過料5万円の支払いも命じた。デモ行進するために全員がドーム周辺を去ったのは、午前8時15分を過ぎてからだった。
「戦争反対を訴えたいだけなのに、一方的に規制を持ち出された」と幹部。過料について市に異議を申し立てる方針という。
昨年の式典当日にデモ参加者の一部がドーム周辺で市職員に体当たりしたとされる事件が起きたのを受け、市は「安全対策の強化」を理由に入場規制を公園全体に拡大した。園内への入場口は午前6時半にドーム付近を含む6カ所に設け、手荷物検査などをした。入場口付近では検査を待つ人の列ができた。
トランプ前大統領が7月に屋外の屋根から銃撃された事件も踏まえ、公園周辺や式典では要人警護も強化された。市と県警は、あいさつする岸田文雄首相らの周囲に防弾パネルを設置。周辺の高層建物の屋上では警察官が警戒に当たった。
入場規制エリアが原爆ドーム周辺を含む平和記念公園全体に広がった6日の平和記念式典の会場。安全対策の強化に一定の理解を示す声がある一方、公園外での集会の開催を余儀なくされた市民団体や手荷物検査などを受けた参列者たちに不満が広がった。
原爆ドーム前で絵を描いていた呉市の画家鷹取昌史さん(62)は規制の開始を受けていったん公園の外に出て再入園を待った。「祈りの場で(デモ隊が)大声を上げるのは許せない。物々しいが仕方ない」と規制拡大を容認した。
日本山妙法寺の僧侶たち約30人は、式典会場に太鼓など大きな音を出す物の持ち込みが禁止されたため、ドーム前で例年開く集会の会場を近くのひろしまゲートパークに移した。武田隆雄僧侶(71)=東京都=は「規制拡大の原因となったデモ隊は今年もドーム前を占拠した。市民や宗教団体への規制こそ戦争国家につながる一歩だ」と訴えた。
会場に設けられた入場口では、手荷物検査や金属探知検査を待つ人が列をなした。被爆者の豊永恵三郎さん(88)=安芸区=は「被爆者の高齢化が進む中、専用の入り口を設けるなど配慮が必要だ」と金属探知検査を拒否して会場を去った。
出勤中にドーム前を歩いていた会社員阿部伸一さん(51)=安佐南区=はデモ隊が警察と言い合う様子を見ながら「他にやりようがないのか」と規制の在り方に疑問を感じていた。
(2024年8月7日朝刊掲載)
「慰霊の日です。配慮をお願いします」。午前5時の入場規制の開始前。前日夜から原爆ドーム前で座り込み、市の規制に抗議していた市民団体「8・6ヒロシマ大行動実行委員会」に対し、市が県警と連携して園外への移動を促した。
100人以上の団体側は市などの再三の求めにも「法的根拠はあるのか」などと声を上げて拒否。市が条例に基づいて退去命令を出し、幹部に過料5万円の支払いも命じた。デモ行進するために全員がドーム周辺を去ったのは、午前8時15分を過ぎてからだった。
「戦争反対を訴えたいだけなのに、一方的に規制を持ち出された」と幹部。過料について市に異議を申し立てる方針という。
昨年の式典当日にデモ参加者の一部がドーム周辺で市職員に体当たりしたとされる事件が起きたのを受け、市は「安全対策の強化」を理由に入場規制を公園全体に拡大した。園内への入場口は午前6時半にドーム付近を含む6カ所に設け、手荷物検査などをした。入場口付近では検査を待つ人の列ができた。
トランプ前大統領が7月に屋外の屋根から銃撃された事件も踏まえ、公園周辺や式典では要人警護も強化された。市と県警は、あいさつする岸田文雄首相らの周囲に防弾パネルを設置。周辺の高層建物の屋上では警察官が警戒に当たった。
式典参列者、容認と不満 安全対策に理解/金属探知検査拒否も
入場規制エリアが原爆ドーム周辺を含む平和記念公園全体に広がった6日の平和記念式典の会場。安全対策の強化に一定の理解を示す声がある一方、公園外での集会の開催を余儀なくされた市民団体や手荷物検査などを受けた参列者たちに不満が広がった。
原爆ドーム前で絵を描いていた呉市の画家鷹取昌史さん(62)は規制の開始を受けていったん公園の外に出て再入園を待った。「祈りの場で(デモ隊が)大声を上げるのは許せない。物々しいが仕方ない」と規制拡大を容認した。
日本山妙法寺の僧侶たち約30人は、式典会場に太鼓など大きな音を出す物の持ち込みが禁止されたため、ドーム前で例年開く集会の会場を近くのひろしまゲートパークに移した。武田隆雄僧侶(71)=東京都=は「規制拡大の原因となったデモ隊は今年もドーム前を占拠した。市民や宗教団体への規制こそ戦争国家につながる一歩だ」と訴えた。
会場に設けられた入場口では、手荷物検査や金属探知検査を待つ人が列をなした。被爆者の豊永恵三郎さん(88)=安芸区=は「被爆者の高齢化が進む中、専用の入り口を設けるなど配慮が必要だ」と金属探知検査を拒否して会場を去った。
出勤中にドーム前を歩いていた会社員阿部伸一さん(51)=安佐南区=はデモ隊が警察と言い合う様子を見ながら「他にやりようがないのか」と規制の在り方に疑問を感じていた。
(2024年8月7日朝刊掲載)