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戦没者追悼式 戦争繰り返さない 中国5県 遺族252人参列

 東京都千代田区の日本武道館で15日あった政府主催の全国戦没者追悼式に中国5県からは遺族252人が参列し、戦争で失った家族を思って平和を祈った。遺族の世代交代も進み、戦争を繰り返さない思いを継承した。(堀晋也、宮野史康)

 広島県を代表して献花した森田淳子さん(80)=広島市南区=は、母の弟、河原宗三さんをしのんだ。海軍第56警備隊で米自治領・北マリアナ諸島のテニアン島にいた1944年8月2日に23歳で戦死。遺骨は戻っていない。「母は戦後すぐに傷痍(しょうい)軍人だった夫も亡くした。2人の供養ができれば母も喜ぶ」と話した。

 山口県代表の岩村誠さん(54)=宇部市=は祖父野原光夫さんをフィリピンで失った。終戦を知らずに戦い続けた陸軍兵で45年8月19日にルソン島からサマール島に転戦する際、亡くなった。今回が初参列。「次の世代が戦争の悲惨さを伝える役割を担う番がきている」と決意を深めた。

 島根県代表の原晴昌さん(86)=出雲市=は父林吉さんを中国で亡くした。日中戦争を機に派遣され、病気で39年11月、広西チワン族自治区沖の病院船で命を落とした。赤ん坊の晴昌さんを抱く写真が残る。「1歳の私や母を残し、無念だったろう。私の命と健康は父のおかげ」と感謝した。

 岡山県を代表して献花したのは服部晃一さん(89)=岡山市中区。父良金さんが44年9月、フィリピン・セブ島で帰らぬ人になった。一家の大黒柱を失い、長男の晃一さんは10歳から働いた。「戦争は残された家族も苦しめる。二度と起こしてはいけない」

 鳥取県代表の田中博文さん(73)=八頭町=は、南方の戦地に赴いた伯父熊雄さんが、終戦2カ月前にマレーシア沖で病死。戦闘が続く国際情勢に胸を痛め「戦争のない世界をつくろうと、若い人に伝えたい」と訴えた。

 広島市西区の大下和男さん(74)は、原爆死没者の遺族を代表して献花した。母ヤエ子さんを被爆37年後に失った。がんが全身に回ったという。核兵器保有国の戦争が絶えない現状を憂い、「原爆の恐ろしさを孫にしっかり伝える」と誓った。

 一般戦災死没者の遺族代表は4人。岡野征二さん(79)=岡山市北区=は、45年6月の岡山空襲で病院の看護師だった伯母保子さんを亡くした。「未来に平和をつなぐには新しい世代への継承にかかっている」と、一緒に参列した長男竜さん(52)に期待した。

(2024年8月16日朝刊掲載)

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