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戦争体験 「最後の」証言会 世羅で来月8日 聞き取り半世紀の山下さん

 戦争体験の聞き取りを半世紀以上続けてきた世羅町小国の山下義心さん(88)が、「最後の活動」となる証言会を開く。米寿を節目に、9月8日にせらにしタウンセンターで開く「平和祈念の集い」を集大成とする。

 先の大戦で約800人が旧満州(中国東北部)に渡り、現地の第二世羅村で集団自決を選ぶなど200人以上が亡くなったとされる世羅郡。地域の歴史を知った山下さんは25歳ごろから、旧満州に渡った青少年義勇軍や看護師たち町内外の約50人から話を聞いてきた。「戦争だけはもう二度としてくれるな」。証言をした人の多くは、そう付け加えたという。

 戦争の悲惨さを伝えるために企画した体験者の証言会は約30回に上る。亡くなった人の体験や思いは山下さん自身が伝え、2022年には14人の声を集めた証言集も発行した。一方で話を聞ける人は年々少なくなっていた。

 集いは午後1時半からで、山下さんが所属する世羅郡文化財協会世羅西地区部会の主催。旧満州で生まれた元中国残留孤児の赤崎大(ひろし)さん(広島市西区)を招き、両親と幼い姉妹を亡くし、13歳で帰国を果たすまでの苦難などを語ってもらう。日中国交正常化50周年の記念イベントに出演した国際ピアニスト水上裕子さんの演奏もある。

 山下さんは「戦後80年近くたち、先の大戦の悲劇が人ごとになっていると感じる。一人でも平和の草の根運動に立ち上がってほしい」と願う。(矢野匡洋)

(2024年8月16日朝刊掲載)

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