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社説・コラム

天風録 『79年目の終戦の日』

 長期戦になれば日本は必ず敗れる-。日米開戦目前の1941年夏、経済や軍事データを踏まえた机上演習で、そんな結論が出される。首相の下に各界から集められた若き精鋭たちの見立て通り歴史は動いた▲NHK朝ドラ「虎に翼」で、先週も描かれていた総力戦研究所である。机上演習では、不可侵条約を結んでいた当時のソ連に攻め込まれることまで見通していた。冷静な分析がいかに優れていたかを示しているようだ▲ところが、「日本必敗」の結論は葬り去られる。日清、日露戦争に勝ち、軍部や政府には慢心がはびこっていたのだろう。展望のないまま無謀な戦いに突き進んで、国内外を問わず多くの犠牲者を生む▲朝ドラには研究所員だった判事が出てくる。無理筋の戦争を止められなかった自責の念に苦しむ姿が胸に迫る。79年目の終戦の日、非戦を誓い続けることが市民の務めだと、心に刻んだ▲机上演習でもヒロシマ、ナガサキは見通せなかった。その原爆を巡る裁判が朝ドラで描かれる。主人公は判事として裁判に関わる。投下は国際法違反だったのか。戦争を始めた国は被爆者にどう向き合うべきか。未来への扉を開くのは、過ちから学ぶことだ。

(2024年8月16日朝刊掲載)

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