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社説・コラム

天風録 『原爆を作る人々よ!』

 〈この男が、世界を変えてしまった〉。そんな宣伝文句の米ハリウッド映画が、この春から日本で上映中だ。原爆開発の指揮に当たった物理学者の半生をたどる「オッペンハイマー」である▲アカデミー賞を席巻した勢いに乗り、核の脅威に対する関心を呼び覚ましている。百八十度異なる立場から呼応し合う詩を、きのうの「長崎平和宣言」が取り上げていた。〈原爆を作る人々よ!〉と切り出す長崎の被爆詩人、福田須磨子さんの作品▲〈幾万の尊い生命が奪われ/家 財産が一瞬にして無に帰し/平和な家庭が破壊しつくされたのだ〉。そして残った者には〈明日をも知れぬ“原子病”の不安と/そして肉親を失った無限の悲しみが/いついつまでも尾をひいて行く〉▲うら若き23歳で被爆した福田さんも顔から腕へと肌を紅斑にむしばまれた。他界する前年、地元放送局のカメラに向かい、言い残している。「原爆というものの恐ろしさを次の代、次の代へと語り継いでもらいたい」▲原爆を落とし、世界を変えた米国の駐日大使は、長崎の平和祈念式典に姿を見せなかった。肩入れする国が招かれないのが不服らしい。追悼と誓いの本旨がいまだに分からないとは。

(2024年8月10日朝刊掲載)

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