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政府の核依存を非難 大会総括 変革は見えにくく

 原水爆禁止日本協議会(原水協)系と原水爆禁止日本国民会議(原水禁)系の原水爆禁止世界大会長崎大会は9日、長崎市でそれぞれ閉幕した。

 被爆80年を1年後に控えた夏。二つの原水爆禁止世界大会では、米国の核抑止力に対する依存を強める日本政府への憤りが噴出し、核抑止に頼る限り核兵器は廃絶できないとの認識を共有した。一方で、議論を重ねた末に政治をどう変えるかは見えにくい大会だった。

 原水禁国民会議系の大会は9日採択したアピールで「不安定な国際情勢を作り出している原因の一つは、核抑止への依存」と強調した。日本原水協系の大会の長崎決議も「核抑止は人類の生存にリスクをもたらす」「人道的立場とは相いれない」と断じた。

 両会場で非難が相次いだのは、核抑止力の強化に合意した7月の日米閣僚会合だった。「核なき世界」を唱えつつ、核兵器を重視する日本政府に疑問を投げかけた。日米韓共同訓練など、米国の核戦略に日本が貢献する実態の報告もあった。

 前広島市長の秋葉忠利氏は原水禁系の大会で、相手より先に核兵器を使わない先制不使用政策の重要性を説いた。核廃絶に向け、まずは保有国間の信頼を醸成しようとする提案だ。原水協系の大会からは被爆者による欧州遊説の計画も飛び出した。

 ただ主催者や登壇者の議論が、参加者全体に浸透したかは分からない。質疑の時間に会場は何度も沈黙に包まれた。両大会が示した認識や政策を政治家の議論へと押し上げる難しさを考えると、熱量に物足りなさも感じる。被爆80年を前に、現実を変えられない「運動」が続くだけでは心もとない。(宮野史康)

(2024年8月10日朝刊掲載)

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