×

ニュース

水没の長生炭鉱 遺骨発掘調査へ 宇部の市民団体 CFで資金募る

 戦時中に宇部市の海底の地下に延びる長生(ちょうせい)炭鉱で起きた水没事故で、地元の市民団体「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」が坑道内に残る遺骨の発掘に乗り出す。まず82年前に閉ざされた坑口の掘り起こしを9月に始める。掘削や遺骨の調査にかかる事業費をインターネットのクラウドファンディング(CF)で募っている。(山下美波)

 刻む会によると、陸上の地中に埋もれている坑口はマツの板にふさがれ、入り口から数メートルにわたり空洞状態になっている。地元工務店の協力を得て掘り出し、10月26日に現地である集会で日韓の関係者や市民に公開する予定。その後は、水中ドローンなどで遺骨の調査を進める。

 別に、「ピーヤ」と呼ばれる海面に突き出した坑道の排気・排水筒跡から潜水士が進入し、調査、発掘する案も検討しているという。

 事故は1942年2月3日に発生。坑口から約1キロ先の坑道内で浸水が起き、二次災害防止のためなどとして、作業員を残したまま坑口が閉められた。犠牲者は183人に上り、うち7割強の136人は朝鮮半島出身者だった。日本政府は遺骨の発掘調査を困難とし、一度も実施していない。遺族が高齢化する中、遺骨返還へ、刻む会が独自に取り組むことにした。

 先月15日には市内の長生炭鉱追悼ひろばで発掘調査に向けた集会を開き、韓国の遺族や日韓の高校生、国会議員たち約170人が参加。韓国の支援者の崔鳳泰(チェ・ボンテ)弁護士(62)は「長生炭鉱の問題を解決しなくて日韓友好はできない」と訴えた。

 CFでは、工事費や遺族の来日費用など800万円を目標に10月13日まで募る。刻む会の井上洋子共同代表(74)は「市民が動くことで最終的に政府へ遺骨発掘を迫りたい。遠方の人もCFを通して今回の事業に関わってほしい」と協力を呼びかけている。CFのURLはhttps://for‐good.net/project/1000940

(2024年8月16日朝刊掲載)

年別アーカイブ