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米オスプレイ墜落調査報告書 根本原因言及なしに批判 岩国基地周辺 配備に不安も

 鹿児島県・屋久島沖で昨年11月に輸送機オスプレイが墜落した事故で、米空軍が2日公表した調査報告書が議論を呼んでいる。事故の根本的な原因に言及していないためだ。専門家たちから「不十分だ」と批判が出ているほか、オスプレイが年内に配備される予定の米軍岩国基地(岩国市)の周辺では不安の声が高まっている。

 「部品の一部にちょっと問題があったが、機体の構造に問題はない」。5日、岩国市役所。米軍の報告書の説明に訪れた中国四国防衛局の田実博幸局長は報道陣の質問に力説した。

 オスプレイは左右にエンジンと変速機(プロップローター・ギアボックス)、回転翼を備える。報告書は事故の一因として左の変速機のギア(歯車)にひびが入り破断したことを挙げる。田実局長は、報告書に示された点検の徹底などの対策で「事故の予防は可能」と強調した。

 報告書はギアが破断した原因には触れていない。航空ジャーナリストの坪田敦史氏は「金属疲労が原因だろう」とみる。その上で「変速機ごとギアを交換すれば恐らく安全性は担保される。米軍は今後、交換頻度を高めるのではないか」との見方を示す。

 一方で、ギア破断の根本的な原因が特定されていないため、再発防止策も十分ではないとの批判が出ている。

 元運輸安全委員会統括航空事故調査官の楠原利行さん(74)=鹿児島市=は「ギアにひびが入った直接の原因を書かず、不十分な報告書」と指摘。「メーカーと根本的な原因を調べた上で、ギアを壊れにくい材質に変えたり、一定時間で交換したりするなど、具体的な再発防止策を示すべきだ」と強調する。

 オスプレイが2012年に普天間飛行場へ配備された沖縄県。開発段階から死亡事故が相次ぎ、根本的な事故原因が不明なことが多い同機種を、玉城デニー知事は「欠陥機」と呼ぶ。今回の報告書についても「構造上の欠陥を放置したまま、運用上の点検だけで問題はないとするのは納得できない。構造上の根本的な欠陥をどうするか、日本政府はもっと米側に要求すべきだ」と述べている。

 岩国基地へのオスプレイ配備計画が7月中旬に市や山口県に伝えられ、安全性への市民の関心が高まる中、報告書は公表された。市内の市民団体「瀬戸内海の静かな環境を守る住民ネットワーク」の久米慶典事務局長(68)は「報告書の安全対策は不十分。住民の平穏を確保できず、オスプレイ配備には反対だ」と訴える。(長久豪佑、川村奈菜)

屋久島沖でのオスプレイ墜落事故
 昨年11月29日、岩国市の米軍岩国基地を飛び立ち、沖縄県に向かっていた米空軍の輸送機オスプレイが墜落し、全乗員8人が亡くなった。米空軍は今月2日に調査報告書を公表。事故の原因について、変速機が破損して動力が回転翼に伝わらなくなり墜落し、不具合を示す警報が複数回出ていたのに飛行を続けた操縦士の判断にも問題があったと結論付けた。米軍は事故後、全世界でオスプレイの飛行を一時停止したが、今年3月に再開させた。

(2024年8月14日朝刊掲載)

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