核抑止から踏み出せず 岸田首相辞任へ
24年8月15日
岸田文雄首相(67)=広島1区=は14日、官邸で記者会見し、9月の自民党総裁選に立候補しないと表明した。
被爆地広島選出の岸田文雄首相は「核兵器のない世界」の実現へ、歴代の自民党政権に比べて強い意欲を示し続けてきた。軍縮外交を率先し、広島市で初の先進7カ国首脳会議(G7サミット)も実現した。ただ、厳しい安全保障環境を理由に米国の核抑止に頼る姿勢も強め、核と戦争を絶対否定する被爆者たちとの溝は深まった。
岸田首相は2022年に米ニューヨークの国連本部であった核拡散防止条約(NPT)再検討会議で日本の首相として初めて演説し「ヒロシマ・アクション・プラン」を打ち出した。核兵器不使用のほか、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効や兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の交渉開始を掲げ、FMCTでは友好国の枠組み作りにつなげた。
これらは現実的に核軍縮を進める上で重要だが、従来の日本外交の延長線上にある。昨年の広島サミットもそうだった。議長としてまとめた核軍縮に特化した初の合意文書「広島ビジョン」。核保有国の米英仏も巻き込み「核兵器のない世界」を目指すとした一方、核抑止も肯定し、被爆地が求める脱却への一歩を踏み出せなかった。
広島県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(82)は「広島選出で期待したが、がっかり。防衛費の増加に憲法改正論議と、被爆者の思いから離れていく気がした」。もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(79)も「裏切られた。核兵器廃絶へ被爆国政府のリーダーとして引っ張ってほしかった」と手厳しい。
政府は先月、「拡大抑止」に関する初の日米閣僚会合を開いた。核兵器禁止条約は署名、批准するどころか、締約国会議にオブザーバー参加する気も見せない。「ポスト岸田」の軍縮外交に被爆地の一層厳しい視線が注がれる。(岡田浩平、野平慧一)
(2024年8月15日朝刊掲載)
被爆地広島選出の岸田文雄首相は「核兵器のない世界」の実現へ、歴代の自民党政権に比べて強い意欲を示し続けてきた。軍縮外交を率先し、広島市で初の先進7カ国首脳会議(G7サミット)も実現した。ただ、厳しい安全保障環境を理由に米国の核抑止に頼る姿勢も強め、核と戦争を絶対否定する被爆者たちとの溝は深まった。
岸田首相は2022年に米ニューヨークの国連本部であった核拡散防止条約(NPT)再検討会議で日本の首相として初めて演説し「ヒロシマ・アクション・プラン」を打ち出した。核兵器不使用のほか、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効や兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の交渉開始を掲げ、FMCTでは友好国の枠組み作りにつなげた。
これらは現実的に核軍縮を進める上で重要だが、従来の日本外交の延長線上にある。昨年の広島サミットもそうだった。議長としてまとめた核軍縮に特化した初の合意文書「広島ビジョン」。核保有国の米英仏も巻き込み「核兵器のない世界」を目指すとした一方、核抑止も肯定し、被爆地が求める脱却への一歩を踏み出せなかった。
広島県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(82)は「広島選出で期待したが、がっかり。防衛費の増加に憲法改正論議と、被爆者の思いから離れていく気がした」。もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(79)も「裏切られた。核兵器廃絶へ被爆国政府のリーダーとして引っ張ってほしかった」と手厳しい。
政府は先月、「拡大抑止」に関する初の日米閣僚会合を開いた。核兵器禁止条約は署名、批准するどころか、締約国会議にオブザーバー参加する気も見せない。「ポスト岸田」の軍縮外交に被爆地の一層厳しい視線が注がれる。(岡田浩平、野平慧一)
(2024年8月15日朝刊掲載)