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戦没者刻んだ碑 冊子に 井原市遺族連合会 「平和の尊さ 考えて」

 井原市遺族連合会は、戦没者の名前を刻んだ市内全20カ所の石碑「忠魂碑」を紹介する冊子を発刊した。会員が会の意義を再確認し、若い世代が平和について考える機会にしてほしいと願って会員や学校に配布した。「祖国の発展と平和を願い、戦場に散った人々の心を忘れてはならない」と訴えている。(西均)

 冊子「井原市の忠魂碑」はA4判70ページ。カラー写真、大きさを書いたイラスト、碑文、戦没者名を載せる。碑の場所を記した図や、日本が関わった日清、日露戦争や第2次世界大戦などを描いた漫画も添えた。

 市は市内の戦没者を2114人とする。しかし、遺族会の調査を基にしたもので、対象となる戦争や碑文の表記基準も地区ごとに異なるため、正確な人数は分からないという。忠魂碑は寺社の境内や学校の校庭、交差点そばなどに立つが、連合会の惣台八十八(そうだいやそはち)会長(77)=西江原町=は「祭るどころか、目に留める人すらいないのが現状」と悲しむ。

 全国的にも樹木に覆われ存在を忘れられたり、「邪魔になる」と移設されたりする事例が増え、風化して文字が判読できない碑もある。

 惣台会長は後世に残すため、昨夏から全ての忠魂碑を巡って写真を撮り、碑文を書き写してきた。約650人いる会員の高齢化が進むことも、冊子づくりの思いを後押しした。

 ただ、碑の清掃や会費集めが困難になり、地区によっては行き詰まり、解散した遺族会もある。惣台会長は「反戦平和の意識を後世につなげたい。碑は平和の尊さを伝えるシンボルだが、遺族頼みの管理は困難になっている」と静かに語る。

 冊子は700部印刷し、会員や市内の全小中学校、寺社、公民館、図書館に配った。惣台会長☎0866(62)5388。

(2024年8月15日朝刊掲載)

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