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死者悼むオペラ 広島から 「修道女アンジェリカ」「ジャンニ・スキッキ」 岩田芸術監督に聞く

23・25日 地元人材 底上げ実感

 ひろしまオペラルネッサンス本公演として、プッチーニ作曲のオペラ「修道女アンジェリカ」と「ジャンニ・スキッキ」が23日と25日、広島市中区のJMSアステールプラザで上演される。川瀬賢太郎が指揮し、広島交響楽団が演奏。演出を手がける岩田達宗(たつじ)芸術監督に、作品に託す思いを聞いた。(渡辺敬子)

  ―「修道女―」は、アンジェリカ役の田坂蘭子をはじめ八木寿子、大賀真理子、森園あや、新家華織、川手響たちが出演。子を思う母親の苦悩を描く悲劇ですね。
 恋をして好きな人の子どもを身ごもっただけなのに、家の名誉を守るため個人が抹殺される。天使のように大切に育てたアンジェリカを、身内が追い込んでいく。

 みんな幸せになろうとして金を稼ぐのに、誰も幸せになっていない。子どもたちに残すべき本当に大切なものは何か、考えさせる。

  ―遺産相続を巡るドタバタ劇の中に父親の無償の愛を描いた「ジャンニ―」はプッチーニ唯一の喜劇です。安東玄人がジャンニ・スキッキを演じ、原田幸子、佐々木有紀、飯塚学、安田旺司たちが出演します。
 親族で財産を奪い合い、詐欺師にやっつけられる物語。ルネサンス以前のイタリア・フィレンツェが舞台で、古い価値観に疑問を投げかける。伝統ある町に新しい人が集まり、力を得て、新しい芽が育つことを願う。

 かつて焦土となり、緑豊かな都市に成長した広島の人々は、その大切さを知っているはず。広島以上にふさわしい上演場所はないと前から考えていた。

  ―稽古は大詰めです。
 緊張するとパフォーマンスを十分発揮できないのは、オペラもオリンピックも同じ。厳しいルールを極めた人間だけが見ることのできる自由がある。出演者もスタッフも自由に個性を発揮できるよう、旗振りするのが演出の仕事だ。

 オーディションには若手を中心に中堅、ベテランが全国から集まった。エリザベト音楽大の尽力も大きく、地元の人材の底上げを実感している。

  ―「亡き夫の夢を見ることができるように」と依頼され、アルノルト・ベックリンが描いた「死の島」が舞台美術のモチーフとなるそうですね。
 死者の記憶を守り、悼み、祈るために描かれた名画が、現代の広島で舞台上によみがえる。79年前にここで亡くなった方々を忘れないでほしい、同時に、新しい人が広島に集まってほしいという願いを込めている。舞台を通じ、大切な人のことを思い出してほしい。

    ◇

 23日午後6時半、25日同2時開演。イタリア語で字幕付き。8千~3500円。学生2千円(当日のみ)。中国新聞社など主催。ひろしまオペラ・音楽推進委員会☎082(244)8000。

(2024年8月17日朝刊掲載)

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