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社説・コラム

朝凪(あさなぎ) 「最後の被爆地」に思う

 パレスチナ自治区ガザを攻撃するイスラエルの招待見送りを巡り議論が噴出した長崎市の平和祈念式典で、少し気になった言葉がある。「長崎を最後の被爆地に」。鈴木史朗市長も広島選出の岸田文雄首相も使っていた。

 間違っていると言いたいわけではない。ただ、1945年以降も核実験などで世界各地に「被曝(ひばく)地」が生じた事実が見えにくくなると心配した。

 46~58年に米国が核実験を繰り返したマーシャル諸島を今年取材した。米国が認めるより広く放射性降下物が降った可能性を示す米公文書や専門家の指摘があるが、顧みられていない。

 住民は被害そのものに加え、その事実が「無視され、忘れ去られてきた」(地元紙編集者)長い歴史にも怒っていた。そして、広島、長崎は痛みを分かってくれると信じていた。(社会担当・下高充生)

(2024年8月22日朝刊掲載)

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