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社説・コラム

『この人』 陸上自衛隊第13旅団長に就任した 今村武(いまむらたけし)さん

 「部隊を強く、隊員を幸せに」。中国地方5県を管轄する陸上自衛隊第13旅団(広島県海田町)のトップとして着任早々、投げかけた。日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増し、自然災害が激甚・多発化する現状に立ち向かうための指揮統率の指針である。

 隊員の幸せには、組織内の「心理的安全性」の確保が欠かせない。ハラスメントの根絶を一番に掲げた。全国的にパワハラやセクハラ事案が相次ぎ、第13旅団でも同様の懲戒処分が後を絶たない。「風通しの良い健全な環境づくり」を、部隊強化の基礎と捉える。

 中国地方への赴任は初めてながら、関わりはある。2018年の西日本豪雨の際、中部方面総監部防衛部長として部隊配置を仕切った。広範囲にわたる被害に直面し、第13旅団を広島での活動に専念させ、近畿地方を管轄する第3師団を岡山に送り込んだ。

 刻一刻と変わる被災地の状況に即応するため、地域事情をよく知る県や市町村との連携を重視。「自治体の防災担当にはわれわれのOBも多い。人脈を生かして関係強化を図りたい」と力を込める。

 陸自隊員だった父親の背中を見て育った。「国家防衛に携わる仕事」を誇らしく思い、進路選択の対象になったと振り返る。入隊後は第8戦車大隊を振り出しに戦車部隊を主に歩んだ。「戦車のプラモデルを作る趣味が高じてそうなった部分も多分にある」と笑う。

 熊本市出身。ジョギング好きが高じてフルマラソンの経験も。中国路でも「機会があれば挑戦したい」。熊本県菊陽町に妻と息子を残し、広島市安芸区の官舎に暮らす。(二井理江)

(2024年8月23日朝刊掲載)

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