緑地帯 ささぐちともこ 被爆ギターの響き、未来へ①
24年8月27日
静まり返った会場に、被爆ギターの音色が流れる。優しく語りかけるように弦をはじく、奏者の指先。その控えめながらも意志を持った響きに、観客は耳を澄ませた。
今年3月、私の著書「ラグリマが聞こえる」と同じタイトルを冠した平和コンサートが、広島市内で開かれた。19世紀後半、ギター奏者のフランシスコ・タレガによって作曲された楽曲「ラグリマ」。スペイン語で、涙の意味。切ないメロディーの中に、どこか温かい光の粒を浴びるように感じる。私が愛する曲の一つだ。練習を重ね、発表会で弾いたこともある。
私がクラシックギターに出会ったのは、今から20年前、天満川沿いに佇(たたず)む小さなスペイン料理店だ。そこで開かれたコンサートで、ギターという楽器から奏でられる、深くも澄んだ音色に魅了された。「私もあんな素敵(すてき)な音を奏でてみたい!」
その頃、娘たちは中学生。私は家計を助けるべく毎日パートで働き、その傍らいつか自分の本を書店に並べたいという夢を持って、作品創作にいそしんでいた。その他にも趣味があった私は、これ以上何も手を出さないと決めていた…のだが、探求心と向上心は抑えられない。そして、ギター教室に通い始める。
その出会いこそが、十数年の年月をかけ、私の夢の実現へと繋(つな)がっていくとは、予想だにしなかった。(ささぐち・ともこ 児童文学作家=広島市)
(2024年8月27日朝刊掲載)
今年3月、私の著書「ラグリマが聞こえる」と同じタイトルを冠した平和コンサートが、広島市内で開かれた。19世紀後半、ギター奏者のフランシスコ・タレガによって作曲された楽曲「ラグリマ」。スペイン語で、涙の意味。切ないメロディーの中に、どこか温かい光の粒を浴びるように感じる。私が愛する曲の一つだ。練習を重ね、発表会で弾いたこともある。
私がクラシックギターに出会ったのは、今から20年前、天満川沿いに佇(たたず)む小さなスペイン料理店だ。そこで開かれたコンサートで、ギターという楽器から奏でられる、深くも澄んだ音色に魅了された。「私もあんな素敵(すてき)な音を奏でてみたい!」
その頃、娘たちは中学生。私は家計を助けるべく毎日パートで働き、その傍らいつか自分の本を書店に並べたいという夢を持って、作品創作にいそしんでいた。その他にも趣味があった私は、これ以上何も手を出さないと決めていた…のだが、探求心と向上心は抑えられない。そして、ギター教室に通い始める。
その出会いこそが、十数年の年月をかけ、私の夢の実現へと繋(つな)がっていくとは、予想だにしなかった。(ささぐち・ともこ 児童文学作家=広島市)
(2024年8月27日朝刊掲載)