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社説・コラム

『潮流』 オスプレイへの不安

■岩国総局長 岩崎秀史

 米軍岩国基地(岩国市)に海軍の輸送機オスプレイなどが年内に配備される計画を巡り、岩国市と周防大島町、和木町、山口県で、受け入れの可否に関する具体的な検討が先週始まった。

 岩国市などは配備計画を「基地周辺住民の生活環境に大きな影響を与えるものではない」と捉えている。騒音や機体の安全性に関する質問に、国が回答した内容を検証した結果とする。

 だが、国の回答も地元自治体の検証結果も、配備計画に懸念や疑問を抱く市民の声をすくい取った内容とはいえないだろう。取材をしていて違和感を覚えている。

 昨年11月、岩国基地を飛び立ったオスプレイが鹿児島県・屋久島沖で墜落し、全乗員8人が亡くなった事故は市民の記憶に新しい。

 オスプレイは開発段階から事故が相次ぐ。米軍全体ではこれまでに64人が死亡、93人がけがをしたという。根本的な事故原因が分からないケースが多いとの指摘もある。

 これに対し、国は「安全な機体と確認している」とし、安全管理に万全を期すよう米側に求めると説明する。この言い分に、自治体側から異論は出ていない。

 岩国市議会が開いた全員協議会でも、各会派は「市民の安心安全が大前提」としつつ、多くは国防への協力などを理由に配備へ理解を示した。こうした動きを踏まえ、福田良彦市長がきょうにも受け入れの判断を下す。

 屋久島沖の事故を受けた米軍の再発防止策を踏まえ、「岩国基地に緊急着陸が増える可能性があり、住民への影響は大きい」と危機感を強める声も出ている。市民の不安に正面から向き合った判断なのか。各自治体に問われている。

(2024年8月27日朝刊掲載)

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