社説 [地域の視点から] オスプレイ岩国配備容認 墜落の不安 解消されぬまま
24年8月28日
岩国市の福田良彦市長がきのうの市議会本会議で、米軍が輸送機オスプレイを岩国基地に配備する計画を容認すると表明した。
福田市長は理由について、国が米側に対し安全管理に万全を期すよう求めるとしていることや、騒音を含め基地の周辺環境が大きく変わらない見込みであること、さらに安全保障上の必要性を挙げた。
ただ昨年11月には米軍横田基地所属のオスプレイが岩国基地を経由して沖縄へ向かう途中、鹿児島県・屋久島沖で墜落。搭乗の8人全員が死亡した。開発段階から事故が相次ぐ機種の安全性に対する懸念は強い。住民の視点に立てば、米軍の都合を優先したとの印象は拭えない。
配備は米軍空母の交代に伴い年内に実施される。計画では岩国基地を拠点とする空母艦載機部隊のFA18戦闘攻撃機の一部を最新鋭ステルス戦闘機F35Cに更新。併せて従来のC2輸送機をオスプレイに機種更新する。
F35CのエンジンがC2輸送機では運べないためとの指摘がある。海軍が運用するオスプレイの国内配備は初めてだが、機数の内訳や具体的な配備時期は示されていない。
屋久島沖での事故後、米軍と陸上自衛隊はオスプレイの飛行を見合わせた。今年3月、安全運用のめどが立ったとして再開。だが、国が岩国市と山口県に配備計画を伝えた7月の段階でも原因の詳細は明らかにしていなかった。 米空軍が今月2日になって公表した調査報告書によると、変速機の破損で片側エンジンの動力がローターに伝わらなくなり、バランスを失って墜落。不具合を示す警報が複数回出ていたのに、訓練遂行を優先して飛行を続けた操縦士の判断にも問題があったと結論付けた。故障と判断ミスが重なり、事故を招いたというわけである。
米軍は、変速機の整備頻度の増加や点検の徹底などの対策で事故予防は可能と強調。構造上の安全性に問題はないとの見解を示している。だが変速機破損につながった歯車破断の根本原因は解明できていない。これで安全と、どうして言い切れるのか。
岩国基地ではこれまでも海兵隊や空軍のオスプレイが他基地と行き来する際の中継地として飛来したり、訓練が行われたりしている。配備となれば、墜落に対する不安の声が膨らむのは当然だ。
東アジア情勢が緊迫する中で日米同盟の重要性は増している。それが国民の信頼に基盤を置くことを両政府は忘れてはならない。だが基地と地域の関係を考えた時、安全最優先の意識が徹底されているとは思えない。
政府の伝達から約1カ月半での市の判断には「拙速だ」との批判も付きまとう。安全確保は容認して終わりではない。歯止めを求める意味で、少なくとも飛行経路や訓練場所などを把握し、市民に伝える必要はあろう。米側に徹底した情報公開を迫るべきだ。
(2024年8月28日朝刊掲載)
福田市長は理由について、国が米側に対し安全管理に万全を期すよう求めるとしていることや、騒音を含め基地の周辺環境が大きく変わらない見込みであること、さらに安全保障上の必要性を挙げた。
ただ昨年11月には米軍横田基地所属のオスプレイが岩国基地を経由して沖縄へ向かう途中、鹿児島県・屋久島沖で墜落。搭乗の8人全員が死亡した。開発段階から事故が相次ぐ機種の安全性に対する懸念は強い。住民の視点に立てば、米軍の都合を優先したとの印象は拭えない。
配備は米軍空母の交代に伴い年内に実施される。計画では岩国基地を拠点とする空母艦載機部隊のFA18戦闘攻撃機の一部を最新鋭ステルス戦闘機F35Cに更新。併せて従来のC2輸送機をオスプレイに機種更新する。
F35CのエンジンがC2輸送機では運べないためとの指摘がある。海軍が運用するオスプレイの国内配備は初めてだが、機数の内訳や具体的な配備時期は示されていない。
屋久島沖での事故後、米軍と陸上自衛隊はオスプレイの飛行を見合わせた。今年3月、安全運用のめどが立ったとして再開。だが、国が岩国市と山口県に配備計画を伝えた7月の段階でも原因の詳細は明らかにしていなかった。 米空軍が今月2日になって公表した調査報告書によると、変速機の破損で片側エンジンの動力がローターに伝わらなくなり、バランスを失って墜落。不具合を示す警報が複数回出ていたのに、訓練遂行を優先して飛行を続けた操縦士の判断にも問題があったと結論付けた。故障と判断ミスが重なり、事故を招いたというわけである。
米軍は、変速機の整備頻度の増加や点検の徹底などの対策で事故予防は可能と強調。構造上の安全性に問題はないとの見解を示している。だが変速機破損につながった歯車破断の根本原因は解明できていない。これで安全と、どうして言い切れるのか。
岩国基地ではこれまでも海兵隊や空軍のオスプレイが他基地と行き来する際の中継地として飛来したり、訓練が行われたりしている。配備となれば、墜落に対する不安の声が膨らむのは当然だ。
東アジア情勢が緊迫する中で日米同盟の重要性は増している。それが国民の信頼に基盤を置くことを両政府は忘れてはならない。だが基地と地域の関係を考えた時、安全最優先の意識が徹底されているとは思えない。
政府の伝達から約1カ月半での市の判断には「拙速だ」との批判も付きまとう。安全確保は容認して終わりではない。歯止めを求める意味で、少なくとも飛行経路や訓練場所などを把握し、市民に伝える必要はあろう。米側に徹底した情報公開を迫るべきだ。
(2024年8月28日朝刊掲載)